『インビテーション』 ここは日本で 街が華やかになるのは 遠いはるかな北の国にいるサンタクロースの到着を待っているからで 私たちの家には 食卓に並ぶ ２０人分の椅子と リビングに集まるときの２０人分が座るスペースがあり そこからさらに迎える準備は…

『秘密の力』 今日になっていきなり── なぜか夕凪が きらきらした目で追いかけてくるの。 私のことを、というか 学校に持っていくかばんを。 もっと正確に言うなら かばんについているマスコットを。 こういうのが好きだったの？ あげようか、と聞いたら と…

『対決！』 お兄ちゃん…… どうしよう！ 夕凪、マホウ使いの子孫だって 前から何度も 何度も何度も 当然みたいに言ってきたけど 考えてみたら あのね、同じマホウ使いが相手だと 夕凪がそんなに優秀なほうのマホウの使い手かというと 実はそうではなかったん…

『星は光り』 きよし このよる── あっ！ お兄ちゃん！ これはその 今からお楽しみ会の歌の練習をするのも ちょっと早いかなとは思ったんですけど。 もう青空ちゃんたちが楽しみにしているのを見たら つられてしまったというんでしょうか。 負けていられない…

『おしまい』 おにいちゃんは おしまい しってる？ おしまい。 ぴのきお おしまい。 にんげんになりました。 かれーぱん たべすぎて おしまい。 かれーのおなべ、からになりました。 みるく のみすぎて おしまい。 ぎゅうにゅうぱっくができた。 ことしも お…

『オーバーテクノロジー』 女の子だから 洗ったお靴をはいて 爪もきれいにしたら あとはすてきな笑顔で ほがらかに挨拶をして出かけるのよ。 お靴はまあ 舞踏会にいけるようなのをいつもはいているってわけじゃないけど 爪はきちんと短く切ったから 手をつな…

『どっちつかず』 この冬になって初めての雪の日。 あたりは白く、だけど厚い雲の下では積もることもなく 学校が休校になることもない。 肩に積もる真っ白くて冷たく たちまち水に変わって重くなる雪に わりとテンションはあがるけど かといってはしゃいでし…

『祈り』 私たちのお兄ちゃんが どれほど蛍の憧れで 頼れる人なのか 世界の誰よりも知っていても それでもなお とても難しい、大事なこと。 明るくて元気な小さい子供たちが いつもその笑顔にふさわしく健康でいられますように。 大変なことがあって泣いてし…

『本能』 ええっ！ ヒカルちゃんが 悩んでいるらしい！？ そ、そうだったんだ…… 大きなお風呂がうれしくて小さく歌いだしたり ご近所のママさんたちと仲良く小さい子相手の苦労をほがらかに語り合ったり 気が乗らないときは入らなくてもいいんだってごろごろ…

『みたま』 ありがたい神様のご利益は 五穀豊穣 商売繁盛 日々の平安 厄払い 学問成就に 恋の実り など。 親しい人が相手でも 気恥ずかしくて言いにくいとき 胸の中で言葉にするだけで はっきり形をとる願い。 聞き届けてもらえそうな あるいは、むずかしそ…

『ヒカルお姉ちゃんとわたし』 小雨はあまり 人に言える上手なことが何もなくて それなのに、もしできるのなら人並みに ふつうに 大好きな人のために少し役に立てるようにと── いつも守ってくれているお兄ちゃんたちを今度は助けてあげられたり そんなうれし…

『ざわめき』 自宅ではない場所で 裸になる。 公共の場所で 人前で…… でも いつのまにか慣れるものね。 別に誰もじろじろ見たりするわけじゃない。 みんなが脱ぐんだから いちいち気にしていられない。 最初は周りに迷惑なくらいはしゃいでいた立夏ちゃんも …

『わざ』 えっ！？ なぜ？ いいの？ おまつりじゃないのに すずもたいこもならないのに よるのおでかけ。 かぜふくふゆのまちを タオルをもってゆく。 おそくなるとぶっそうだから おにいちゃんとおねえちゃんたちが なるべくはやめにかえってきたら すぐの…

『冬篭り』 寒さは日々厳しくなる。 もう冬を眠って過ごす生き物たちは ねぐらに食べ物を運びきっただろうか。 １２月がもうすぐそこまで近づき 人々が慌しくしている時 寒い季節を越えるために彼らは眠る。 まったく合理的だ。 だが、寒い時期もささやかな…

『恋愛相談』 恋をすると 胸が甘くときめいて 恋をすると ためいきばかりがこぼれて 恋をすると たったひとつの願いの他は何も浮かばない。 このままではいけないと思っても 今さらどうすることもできないわ。 だって春風は この世界でたったひとり 他の誰で…

『まーま』 ちゅるる まーま！ みー、あむるっちゃ むっちゅっちゅ、まーま！ はる、んまーにゃ ほわほわ、まーま！ みじょ、のんっちゃ るんっちゅ、まーま！ ほんわあ むにゅっば んーばっ んばあ んばっ！ おー、ちゅわっちゅ、まーま！ （だれがいちばん…

『おひめさま』 みんなでお絵描きをしていると 人気なのはいつもかわいい女の子。 ねこのみみや天使の羽、 金のティアラだとかカチューシャ、ピンクのリボン、 海と晴れた日の色のセーラー服に深い紺のブレザー、 純白のプリンセスみたいなドレス。 読んだこ…

『トーイズ』 んんっ！？ 掃除機がいきなり重くなったような？ あっ、にじちゃんどうしたの！ おねえちゃんはおしごとちゅう。 掃除機にまたがっちゃ ダメだヨ♪ ねっ。 ほこりっぽいし、 あぶないし、 おじゃまだし。 あんまり面白いものでもないでしょ？ ひ…

『ケーキが大好き』 さくらが好きなものは お兄ちゃんと ふかふかおふとんと おにわをはしるバッタとすずむしと ごはんと ケーキ！ バッタとすずむし あんまりいないから── みんなが早くかえる 冬になってしまいました。 えっとね。 さくらね、しってるよ。 …

『おさな遊び』 たまに早く帰ってみたら 小さい子たちにおねだりされて あたたかいもみじのような手のひらで庭までぐいぐい引っ張られ 後から上着を手に小雨も連れられてきたところで はじまった今日の遊びが まりつき。 はねるゴムのボールを 地面について…

『春眠？』 日が当たるお部屋は あたたかい。 みんなが集まるリビングは お庭に出る窓の前に陣取ると ぽかぽかで すや…… すや…… んっ！？ 寝てないよ！？ あれっ、夢か。 お兄ちゃんが今日は早く帰ってきた夢なのに── 遊びに行く約束もして 準備をはじめた瞬…

『傘の下』 秋晴れのいい天気が長く続いたような気がする。 今日は曇り。 日に日に増して行く寒さを実感したわ。 もし降るとしたら 私たちの町もそろそろ白い雪なのかな── と思うくらい。 北海道や東北はいよいよ厳しい寒さを迎えるみたいだけど ここはまだ…

『おなまえ』 あのね じつは── そらのおなまえは そらちゃん。 なの。 しってた？ だってね、 みんなが おおきなこえでよぶの。 おーい！ おおーい！ こっちこっち！ はいっ。 なあに？ そらちゃん あそびましょ！ はーい！ そらちゃん かわいいな！ はーい…

『スペシャル』 一手間かけるっていいかんじ。 愛って、見つめ合うだけだったり 側にいるだけで伝わるときももちろんいっぱいあるけれど それでも届けるために一工夫してくれたら ますますうれしくなるものよ。 難しいことだし 失敗もするけれど 愛している…

『おかわりの季節』 秋も深まり 食べ物がおいしいから つい食べ過ぎるのだと家族のみんなが言います。 私はあまりたくさん食べなくても良いと思います。 それは栄養に偏りが生じて、成長に少し影響します。 おいしくても摂取する量を自分で抑えることはでき…

『もじゃ』 ばあー ふわっちゃ。 おちゃ。 おば？ ほわわわぁぁ ほわわぁぁ …… ちゅん。 …… ふわっ？ ふにゅう？ うーん……むにゅう？ はっ！ もじゃもじゃ── もじゃっ！ うふふふ ふわわわ ふんわぁー！ ばあっ。 ちゅん。 （あさひはみつけちゃった。 はれ…

『たからじま』 おにいちゃん！ おやまは こわいのよ！ もりのおくで がさがさおとがしたら けものがちかづいているの！ きゃーってにげなきゃ。 からみついたつたのすきま きみのわるいなきごえがきこえたら こどもをねらっているおばけどりなの。 きゃああ…

『風の子』 ずっと薄雲に陰った寒い日となった。 あまりに寒くて みながその話ばっかり。 気を使ってくれて 姉じゃたちが上着を着せてくれるのは楽しいが 幼稚園でもおうちでも お外に飛んでいった後をついてくる子は少ない。 どんな寒い日であろうと わらわ…

『あたらしい』 じゅういちがつは どんなつき？ きのうはじゅうがつ。 さむかったの。 つぎにくるのは じゅうにがつ。 じゅうにがつは ゆきがふってね クリスマスだから ゆきがつもる。 ツリーにも 木のえだにも ピンクのおぼうしの さくらのあたまにも つも…

『システム・ノーガード』 そっと目を閉じると、夜の帳はどこにでも降りてしまいます。 亞里亞のところにも。 兄やのところにも同じに。 そうして星が瞬きはじめるのです。 小さい星の明かり。 まぶしく灯る白くてかわいい光。 あれは遠い彼方にあって、手が…