ヒカル

『おさな遊び』
たまに早く帰ってみたら
小さい子たちにおねだりされて
あたたかいもみじのような手のひらで庭までぐいぐい引っ張られ
後から上着を手に小雨も連れられてきたところで
はじまった今日の遊びが
まりつき。
はねるゴムのボールを
地面について、手のひらで受け止めてはまた投げて
歌の調子に合わせて足をくぐらせたりしていく遊び。
こういう遊びは私より小雨が得意なんだ。
私は途中で調子に乗って
別の遊びをはじめてしまうから。
リズムをとるための歌がなくてもなんとかなってしまうし。
わざわざとりにくいところに投げてみたりすると
違うでしょっておこられる。
そのたびに
ごめんごめんって。
口だけで反省もしてないような顔をしているから。
こういうときの人気ではとても小雨にかなわない。
あんまり大きくない声の小雨が
ばっちりリズムをとって
あんたがたどこさ。
その横で、まりつきに夢中になって歌うのを忘れている子がいたら
ペースを合わせてあげてゆっくりめ。
私が無茶したときにも近くで歌ってくれたらいいけど
もうすっかり大人になってしまったからな。
あんまりかまってもらえない。
考えてみれば、小さい頃から他の遊びが好きで
こういう時の歌もあんまり知らない。
さくらや観月や夕凪に教えてもらいながらおぼえて
歌に合わせてつけるようになると
うまいうまいって褒めてもらえる。
一日で歌を覚えて
ずいぶん上達もしたみたい。
小さな先生たちのお墨付き。
私はみんなに
女の子らしい遊びをあまり教えてあげられなかったな。
オマエが来たから
もう私たちの家では
私が自分から言い出して
体を動かして駆け回るような男の子っぽい遊びをする必要はなくなった。
これからは、大きくなるみんなのために
新しい歌や
知らなかった遊びを覚えるようになってもいいのだろうか。
遊び相手がいなくて一人にならなくてもいい
面白いことをたくさん教わって
試してみる。
おねだりするときに
わかった上でわがままを言って手を引っ張る誘い方は
今日で覚えたかもしれない。
それとも、今までしなかっただけで
やってみたいと思ってはいたのかな?
どうやら調子の乗ったチビたちの話だと
私の知らないことをたくさん教えてくれるらしくて
明日はハンカチ落としに誘ってくれるみたい。
新しいルール、新しい戦術、
時には敗れる悔しさと
みんなのまだ見たことのなかった真剣な顔と
戦いで生まれる友情が私たちを待っている。
そんな場所に
遠慮なく手を引っ張ることを覚えたんだ。
だから、これ以上わざわざ言うことはない。
さあ。
行くぞ!