『おやすみ』
夕凪ちゃんはいつも元気で忙しい。
そうなると今日みたいに
お昼寝して過ごす日もあります──
最近は、お兄ちゃんに遊んでほしくて
ずっとお外に呼んでいたんだもの。
夕凪ちゃんが大好きな
誰にもとられたくないお兄ちゃん。
あたたかい春、
きれいに咲いた満開の桜──
いいものを見つけたら
すぐそばにいてほしいお兄ちゃん。
一緒に喜んでほしいお兄ちゃん──
夕凪ちゃんには
とってもすてきなお兄ちゃんがいるの。
でも、夕凪ちゃんは
まだ知らない。
そんな夕凪ちゃんの気持ちを
ちゃんとわかっていて、
疲れて眠っていても
夕凪ちゃんを一人になんてしないで
そばにいてあげるお兄ちゃんのこと。
目が覚めたら、一緒に遊びに行くんだろうなって
今日も夕凪ちゃんといてくれるお兄ちゃんのこと。
夕凪ちゃんが思っているよりもっとやさしい
私たちの大好きな──
大事な家族のこと。
春風にとっては
お兄ちゃんがいる気持ちはわからないけれど
春風に王子様がいて
一緒に過ごしてくれている気持ちはわかるから
もう何も、これからは
困ることはない。
きっと夕凪ちゃんは
せっかくの春の日に遊びに行けなくて
起きたら物足りなく思うのかもしれない。
でも、私たちはわかっている。
あんなに夢中で駆けて行った日々と比べたって
ちっとも残念に思うことはない
そんな日を過ごしていたこと──
やがて夕凪ちゃんも
気付く時が来るのも──私たちはもう知っている。
だから今日は、ゆっくり休んで
またみんなで過ごす楽しい時間のために
備えておくといいと思います──
うーん、ふわわ──
幸せそうな寝顔を見ていたら
春風にも眠気がうつってしまったみたい。
目が覚めた時にまた元気になれるおいしいものを作っておきたかったけど
少し休んでおこうかな。
春風にも、そばで待っていてくれる家族がいるんだもの──
私の王子様も、春風の隣で休んでみるのはどうですか?
今日はすぐ近くで寄り添って──みんなと少しまどろんでいても
風邪をひいたりしないんじゃないかな──
ね、いいでしょう?