立夏

『春はやがて』
今年の春も
いっぱい楽しんだ!
お弁当をみんなで作って
桜色に囲まれるお庭に広げたり──
いい季節になって
これからにぎやかになっていくのは
おうちの中ばかりではなく
花壇のほうもそうなのだ。
小雨ちゃんたちと土いじりをして
汗をかいたり──
忘れてはいけない
過ごしやすい季節の一番の楽しみ、
よく日の当たる窓際で
集まった家族のみんなと過ごして
いろんな話をして
ぽかぽかで眠くなったらゆっくりしたっていい──
気持ちのいい日向ぼっこができた。
これでもう
今年の春は思い残すことも何もない。
もうすぐやって来る
だんだん近づくあの連休に向かって進むのみだ。
それで特に問題はない──
待てよ、本当にそうだろうか?
立夏の野生の勘が
何かを告げようとしている──
それはいったい?
今年は春らしい時間をいっぱい過ごした。
とてもいい季節──
楽しい日々。
これから先、目を閉じると
きっと浮かんでくるような
忘れられない──みんなで過ごした思い出。
咲き開いた花に包まれて
あたたかな時間ばかりがあって
これ以上を本当に望むことがあるのかな?
もしあったとしても
来年もみんなで過ごしたいと言った
次の楽しみにとっておいたって
なんにもいけないことはない。
でも──心の中で声がする。
ひらひらと桜が散って
これからまた
楽しい季節がやって来るんだって話をして
こんな景色の中を
大好きな人と歩けたら。
そんなにいいことを
誰に遠慮をすることがあるだろう。
欲望のままにやってしまえ。
あれっ!?
ささやく声は
あまり野生の勘とかいうのではなくて
もしかして心の中の天使と悪魔の
片方だけがあらわれてしまったようだな?
天使のほうは
春の陽気でまだ寝ぼけてしまっているようだな──
たいへん! どうしよう!
でもまあいいか。
あたたかくて陽気もいい──
こんな毎日に悩みや問題なんて
なにひとつないに決まっているんだから、きっとそうだ。