氷柱

『休息』
春めいてきた
あたたかさだったり──
曇り空の下、強い風が吹くと
まだ寒かったりで
不安定な季節。
気温の変化で体調を崩してもいけないし
春を楽しみ尽くしたい気持ちも
たまには抑えて、
意識して休憩をとる時間も必要なの。
なにしろ、ここしばらくは
たっぷり遊びたい春休み、
何かと体力が必要になることも多い新生活、
そしてもう少ししたら
きっとさわがしくなる連休まで
やって来るというのだから
この時期を楽しもうとするなら
なおさらきちんと
体調と相談しなくては。
あんまり気候が落ち着かないと
ユキも何かと大変そうだし──
隣で一緒に休んで
調子を見ていられる家族がいたら
安心だものね。
というわけで
私が自分の意志で、休む日だと決めたら
もう何があっても動かない。
てこでも動かない。
せいぜい、日向ぼっこしながら本を読むくらいで
春らしいお出かけを誘う、どんな言葉があったって
氷柱の心を変えることなどできない──
こんなこともあろうかと
おやつは買い置きがあるし
片付けやお手伝いの用事も
自分の役割は大体済ませた。
そう──
何かとばたばたすることが多い春の毎日に
とうとう見つけた
ゆっくり穏やかな休日。
だめよ!
こんなのどかな時間を利用して
新しい趣味を始めようとか──
学校の予習を先まで進めておこうとか──
ましてや、ホタ姉様の突発おやつ作り教室にまで参加して
スキルアップを目指すできる女なんて──
今日の氷柱は、
この日だけは何も知らないで
のんびりゆっくり
人間がもっとも優雅な時間を過ごす日にするの。
そういう春だって、あっていいでしょう?
またどこかでにぎやかな声がして、
やがてもうすぐ
どうしたって
いろんなことは始まってゆく──
まったくもう。
変わらないことなんて何一つないみたいだわ。
今日の私だけは──そんなこと忘れているんだけどね。