『真夏の到来』
どんどこどんどん
今日は楽しい七夕。
ささのはさらさら
短冊たちは仲良く、そよそよと揺れる。
星が出て涼しくなったことだし
こんなにいい日なら
みんなの願いが彦星と織姫に届け!
せっかくの七夕、
もう全部なにもかも叶えてしまえ!
夕凪が神様だったらそうするのにな──
今日も暑い日だったね、お兄ちゃん。
夕凪もよく汗をかいた。
どうしてこんなに暑いんだろうと考えると
夕凪には少し心当たりがある。
あれはきのうの夜更け、
夏の夜はおばけもうろつく季節だと
観月ちゃんがおまじないをしていたのを見かけたの。
怖い話のシーズンだ、
観月ちゃんが心配して術をかけても
何も不思議なことはない。
でも、みんなは
七夕の笹に短冊をつるしたでしょう?
海晴お姉ちゃんもお兄ちゃんも
小さい子みんなまで
きらきらした夢を詰め込んだ──
もちろん、マホウ使いの子孫である夕凪だって
もう夢中になって
絶対叶うと信じながら
願いを書いたの!
そんなに都合のいいことばかり起こるわけじゃないけれど
こういうのは、信じたほうがずっと楽しいでしょう?
きっとみんなのパワーと
夕凪の不思議な力と
観月ちゃんのおまじないまで混ざり合って
渦を巻いて点にのぼっていったに違いない。
そんなにすごい力が
お天気に影響を与えるのも
考えてみれば当然のことだ!
本当に叶うかどうか、
夕凪のお調子ものの願いまで
どれも残らず七夕のマホウがかかったのかなんて
誰にもわからないけれど──
こんなに暑い日を元気に過ごした良い子たちには
そのくらいのいいことがあったって
いいじゃない!
そう夕凪は思ったのでした。
お兄ちゃんが短冊に書いたお願いは何だったの?
夕凪は、今年こそ本物のマホウ使いになりたいって書いたよ。
みんなのもとに幸せを届けるために
箒に乗って天の川を行く
七夕の魔女みたいなものがお兄ちゃんの頭上の夜空を踊る日も
そう遠くはない──
でも、妖怪判定で観月ちゃんのおまじないに引っかかったらどうしようかな?
まあその時はその時ということで!