立夏

『あれれ!?』
どうしたことだ!?
春らしく落ち着いて
のどかなわがやの風景──
忙しく新生活の準備が
あれこれと進む中でも
つぼみがふくらみ──
色づく窓のそばに
並んで座るふたり。
大人っぽくて
余裕がある時間を過ごして──
絵のような景色の中に
たたずむあれは
オニーチャンと氷柱ちゃん。
きのうはついに
氷柱おねーちゃんがうららかな春を楽しむ
大人になってしまった!
立夏ももうすぐ──
いや、やがては──
たぶん、いつかそのうちに──
散らかったお部屋を片付け
進級の準備も済ませて
春のおしゃれな装いと
落ち着きを身に着けた中学生として
春の近づく窓際で
オニーチャンと楽しくおしゃべりをして
過ごすときが来るのだ!
氷柱おねーちゃんを見ていたらそんな気がしてきた!
と思っていたのに
どうしたの?
あたたかな日なたでのんびりしているのは
春風おねーちゃんで、
ふたりの行く先を聞いてみても
にっこりするだけで答えようとはしない。
ああ、こんなとき
立夏にも──
おすすめしてもらったお茶をゆっくり楽しみながら
待っている余裕があったらな!
どこにいるのかと家の中を駆け回って
ほこりだらけになって
帰ってきた氷柱おねーちゃんをおどろかせたヨ!
後から聞いた話によると
どうも春風おねーちゃんが
言葉たくみにいい陽気の中を歩いてみたらと
お買い物を頼んで──
だいぶ重い荷物を抱えて駆けまわることになったそうだ。
そういうのも
春らしい過ごしかたなのだろうか?
氷柱ちゃんはずっと考え込んでいたのだった──
オニーチャンはどこへ行っていたのかな?
やっぱり春風おねーちゃんの手のひらの上だったの?
立夏はね──適当に受け答えをしていたら
やっぱりなにやらお手伝いを言いつけられていて
明日はどうも大変そうだヨ!
春らしく、ばたばたあわててみたり
おやつのごほうびもあると聞いてうきうきしながら
立夏はまた
今年の春もくりかえすおねだり──
おにーちゃん
たーすーけてー!