春風

『いつも一緒』
ウフフ──
楽しかった冬休みが
終わってしばらくして──
新しい年にもずいぶんなじんできた気がします。
心なしか最近も暖かく
まるで春風の気持ちを映しているかのよう。
だって、いつもあなたのそばに
いられた日々があって──
そしてこれからも離れずに
私たちは一緒なんだから。
あなたもそう思ってくれるでしょう?
私の王子様──
というわけで
ここ最近は、みんなのお世話に
いろいろ駆けまわる毎日でした。
そろそろ余裕も出て
もうまもなく節分で
春を感じる時が近づいてくる──
少しだけ穏やかに過ごせそうですね。
でも、春が来る前に
私たちのおうちには
もうひとつ、楽しみなイベントが待っています。
そう──
恋をする女の子が
年に一度だけ、心からの勇気で
好きな人にだけ思いを伝えることができる
恋人たちの日──
それはまるで
春風のために昔から用意されていたような。
ああっ、ちがった!
春風と──あなたのために。
私たち、初めて出会ってから
ずいぶんたくさんの日々を重ねて
どれもかけがえのない
特別な日になって──
また心からの愛を伝えあう日を
一緒に過ごせるなんて
楽しみですね!
私の王子様、春風は今もまだ
ふつつかもので
頼りないかもしれないですが──
これからもおそばにおいてくれるでしょうか?
でも──答えなんていらないの。
そうでしょう?

青空

『おんぶおばけ』
あいつのなまえは
おんぶおばけ。
きょろきょろして
おおきなせなかを
みつけては──
せなかにのって
まったりする。
きょうも
きょろきょろ。
いつでもきょろきょろ。
おんぶして!
そのいきものは
そらちゃん。
みんなのせなかが
だいすきなの。
おおきいせなか
おちつくせなか。
そらより
おにいちゃん
おねえちゃんたちのせなか。
あっ!
せなか!
こんなにいいもの
みつけたら
のりにいきたい
まったりしたい。
このごろは
どうやら──
おおきくて
のりやすいせなかが
みんなのせなか。
おにいちゃんの
いつものせなか。
おねえちゃんたちの
そらをのせやすく
おおきくしてくれたせなか。
それが
そらをよんで
せなかにのせて
どう?
やせたでしょ!
ひきしまったよ!
うんどうがよかったよ──
おおきなせなかは
もうないの。
あのせなかは
そらちゃんもいっしょに
どう?
って、さそってくるせなか。
わーい、やるやる!
そらもひきしまる!
それでも、かわらない
おにいちゃんのせなか。
いつもみんなよりおおきいね。
そらをのせるせなか。
うんどうしたそらが
そのばしょをさがして──
あしおとをあとにのこして
きょうもかけてゆく
おおっ!
あれが
きょうもあしたもげんきな
うわさのおんぶおばけだ。
おにいちゃん!
おんぶして!

『名残り』
みんなで過ごした
あのお正月も
年末年始の楽しいイベントも
すっかり終わったと思っていたら
ぽかぽか鍋の湯気に沈む
あれはおいしいおもちではないのかな?
その向こうに見える
みんなの表情は──
穏やかなあの時間を
一緒に過ごしたときの
おたたかな笑顔にも見えるかな──
新しい年に向かって
歩み出して、
いろんな出会いがこれから待っているけれど
ときどきは──
今までと変わらないように思える
楽しい食卓を
みんなで囲みたいものだ──
あれだけたくさんあったおもちなのですが、
なにしろおうちには食いしん坊がいっぱい。
その子たちに大盛りを食べさせたくて
腕を振るいたい子もいっぱい──
それなら結果は
もうわかっている通り。
さすがに今日明日ではなくても
一月のうちに使い切れるくらいかしら?
でも、おもちがたくさん
おうちにあることで
おなかがふくれて幸せいっぱい、
どんな味付けやお料理にも合ってあたたまる、
それなら今でもたっぷりの
このおもちは──
むしろ、常備しておいていいくらいなんじゃないだろうか?
足りないくらいでは──
ないのかな!
と、いうのは冗談として
どんなにおもちがあって困ったときでも
ここは蛍におまかせです。
おいしそうなアイデアなら
わりといくらでも湧いてくる──
そして
いつもみんなにおいしく食べてほしい気持ちも尽きない。
お正月が過ぎても
腕を振るう機会はいっぱい。
蛍は今のところ
休む暇もなく──
もう、お正月とは呼べない日でも
楽しく過ごしています。

虹子

『もっちもち』
たいへんだ!
おうちのなかが
おもちでいっぱいだ!
あっちに
おもち。
こっちに
おもち。
みぎをみてもひだりをみても
おもち。
おもちのやまが
みんなをおしつぶそうとしている!
はたして
ひとはおもちをたべきることができるのか──
いったいどうして
こうなった?
こさめおねえちゃんが
ついうっかり
おもちをおおめに
かってきてしまったの。
それから
みはるおねえちゃんが
もしも、こさめおねえちゃんがみんなのおもちをかいわすれたらと
もしものことをかんがえて
おおめにかってきたの。
それから
ヒカルおねえちゃんが
そういえばおもちをたべたいって
いってたこどもがたくさんいたな、
って
とくになんにもかんがえないで
おおめにかってきたの。
それから
はるかおねえちゃんが
らいげつは、ついにバレンタイン!
おうちのなかでおもちのわだいが
いっぱいだったから
おもちチョコもためしてみましょうって
おもちをおおめに
チョコをもっとおおめに
やまのようにかかえて
かえってきたの!
わあーい!
にじこ、おもちがだいすきよ。
まだちいさいから
ちいさいのをたべるね。
そんなにたくさんは
たべられないけど──
やっぱり、ちょっとたべたいな!
おうちのおもちは
それはもう、いっぱいなの。
どうするんだろうって
こどもたちがそわそわしている。
いちねんぶんは
ありそうかな──
いっしょうぶんも
あったらどうしよう──
おおきくなって
おにいちゃんとけっこんして
しんこんのときも
すこやかなるときも
おもちをたべてすごすの。
それなら、まあいいかな?
にじこ、きょうもまたちょっとだけおもちをたべるよ。
ちいさいからね。
みんなといっしょでたのしいけど──
たべすぎないようにするの。
おおきくて、ちからもちのおにいちゃんも
なにしろ、あいてはおもち。
きをつけて!
あわてないで。
みんなといっしょがたのしくて
よろこんでたべすぎないで──
おもちはよくかんでたべてね。
チョコもね。

観月

『大事なこと』
のんびり過ごしたお正月が去り
日頃の忙しさが戻って来て
思いのほか──
やることが多い一月の半ば。
浮かれた気分のまま
あとまわしにしていた
お片付けや
お勉強、
お手伝いに──
ついに向き合う時がやって来る。
人の世を生きるとは
簡単なことばかりではないのじゃ。
とはいえ、季節は冬。
寒い時期に無理をして
体を壊しては元も子もないからの。
いま、やるべきことは
何なのか──
一番に優先するべきは。
人によって違ってくるその答え。
新しい日々が
めまぐるしく回りはじめて、
いよいよそれぞれの出すべき答えを
問われる時が多くなるであろう──
これから用事も多くなる時期だからこそ
心を穏やかに
自分と向き合う静かな時間も
必要になってくるはず。
とても大事だとわらわが良く知っている
気持ちの澄み渡る修行を──
みんなにも教えてあげて
役に立ちたいものじゃ!
でも──
わらわが良いと思っても
他のみんなには大変だったりするかもしれぬ!
一人で自分と向き合うのは
厳しいこともあるかもしれぬ──
そこでホタ姉じゃにも相談して
みんながゆっくりできるために
できることはないかの?
今の時期はそれこそが大事だと思うのじゃ!
お話を聞いてもらったら──
お茶を用意したり
手作りのお菓子で
気持ちをゆったりしてもらうのも
ありかもしれない、ということなので
教えてもらっている最中じゃ。
穏やかな時間を作る
助けになればよいの──
それはまるで
滝に打たれ、水をかぶるのと似た
すっきりとした心地を知ってもらえればとの願い──
今の時代はそういうのを
リラックスできるティータイムと言うのだそうな。
昔ながらの修練だけでなく
みんなに喜んでもらう術を、
小さなわらわは今年もゆっくりと──たくさん学んでいける一年になればと思うぞ。

小雨

『ひとつひとつを大事に』
新しい年になって少し経ち
だいぶ馴染んできた気もするし
まだ戸惑う時もあり──
ともかく寒い日の日常を
なるべく体を大事にしながら
みんなと過ごしています。
お正月のときに食べ残したおもちが
まだ少しあったことに気が付いても
どうしよう?
今の気分は
もう、おぞうにという感じでもないし──
少しの間だけ
話し合いは続いたと言います。
好きなようにして食べてもいいと思うんだけど
今年の目標のひとつは
毎日を大切に
ひとつひとつの出来事を
おろそかにしないで
どれも心に残る大事な時間に
きちんとできたらいいな──
と、できるかどうかわからないけど
そんなことを思っていました。
小雨には高すぎる目標──
でも、立夏ちゃんも麗ちゃんも
お正月は珍しく意見が合って
目標なんて無謀なくらいでちょうどいい、
そんな二人に小雨もつられていたのを思い出します。
まあ、立夏ちゃんと麗ちゃんの目標が
なんだったのか──
小雨は怖くて聞けなかったけど。
せっかく出てきた
みんなの大好きなおいしいおもち。
忘れられないお正月の楽しい時間──
お姉ちゃんたちは、せっかくみんなが好きなおもちなら
もうちょっと買ってきてもいいかなって言ったんだけど
小雨は、ふいに出てきたこんな出来事を
おいしい思い出にできたらって──
少し真面目に考えたりもしたんです。
もう、ぜんぜん普通の毎日に
そっと出てきたおもちに
小雨も応えてあげたい。
私たちのお正月を飾ったこの子を
しっかりみんなに愛されるおいしいお料理にして
お皿に乗せて、みんなで囲みたい──
そんなふうに気合いを入れてちょうどいい焼き加減を探っていたら
やはり小雨のことなので
焦がしてしまいました──
ひとつのおもちを大事にするって、本当に難しいことですね。
なんて、これは教訓でいいのかな──?
普通の毎日でも
やっぱりうれしいおもち。
小雨が焦がした分、明日は少し多めに買ってこようかなと思います。
お兄ちゃんも、お正月を思い出してうれしくなったりするかな?
それとも、普通の日でもおいしい好きな食べ方があったりしますか?
小雨はまた失敗するかもしれないけど──
みんなと食べるおもちを思うと
なぜか、悲しい思い出ばかりにはならないような気がするんです。

さくら

『はやりのあそび』
おうどんにいれると
きれい──
それは、かまぼこ。
ぷるるんってふるえて
さくらのつまむ
はしのなか──
とってもけなげで
かわいいの。
おくちにいれると
ぷるぷるかまぼこと
おだしのあじ
おいしい、おうどん、
いいにおいのおうどん。
おうどんにはやっぱり
かまぼこがはいっていないと
さくらはつまらない。
でも、あんなにすばらしい
かまぼこなのに──
おせちののこりは
もうおしまい。
おしょうがつ──
たのしかったね。
おいしいものが
いっぱいだったね。
でも、どうしても
おわってしまうんだって。
おしょうがつなんだから
しかたがない。
それはそうだ──
たしかに
みんなのいうとおりだ。
でも、さくらは
もうすこしさきまで
かまぼこのおうどんを
たべたかったな。
おしょうがつのあそびも
たくさんもっと
お兄ちゃんとあそびたかったな──
って、おはなしをしたら
お兄ちゃんはさくらといっぱい
あそんでくれたの。
かけっこ
おままごと
おふろでながしっこ。
さくら──
おしょうがつがおわっても
いいかもしれないな!
お兄ちゃんがいてくれるんだもの。
おうちのみんなに
おうどんが人気だというので
ホタおねえちゃんは、おあげをかってきて
へんかをつけることにした。
ホタおねえちゃんがいうには、
いままで
かまぼこだったからね──
つぎは
おおきなえびのてんぷらを
おみせでさがしているというの。
おあげののったおうどんは──
おだしがじゅわっと
あつあつなの。
やけどにちゅうい!
でもおいしい!
おしょうがつはすぎていく──
そしてさくらは
あたらしいあそびと
おうどんにであう。
としがあけてだいぶすぎたねって
みんなでおはなしするの。
けっこう、あたらしいあそびをしたり
いろんなことがあったね、って。
だからたくさんのであいが
これからもまっているんだって
そんなおはなしを、みんなとしました。