『悪魔』
かわいく見せたり、
隠し味を一つまみ
くわえたり──
ちょっとした工夫で
生まれたての子羊のような
無邪気な子供たちは
だまされたみたいに
苦手な食べ物もぺろりとたいらげる。
ちょっとした工夫で
素直に反応してくれて
成功も失敗するときも
一目でわかりやすいのは
子供と過ごす日々の喜び。
特にこの頃は、
台所にも
家中の飾りつけにも
秋の気配と──
ハロウィンを期待する気持ちが
わいわい押し寄せてくるようで、
雰囲気に乗っかって
かわいい食器に
キャラ弁などが
大人気。
うれしい!
蛍が腕を振るう季節です。
そうして今年も
おうちハロウィンパーティー
メニュー選びや
仮装の準備に
やりたいことはたくさん。
まだその日ははじまっていないのに
もう魔女の指先が
出番を見つけたのかもしれない──
みたいな。
今年はなんだか
押し入れの隅や
薄く開きかけたドアの向こうに
もうやってきたお化けの姿を見かける証言が
増えてきているようなので、
せっかく盛り上げてくれている悪魔たちのいろいろな姿に
敬意を表して
特に仮装の方向性を決めないで
勢いにまかせてみようかと作業をすすめているのですけど
本当にこれで
うまくいくのかどうか──?
いいものが出来るのか!
もりあがるのか!
そして
まにあうのか!
時間とアイデアがもう少し欲しい
都合のいい悩みを持った贄のもとへ
あらわれるのは
いったい──?
いい閃きがやってくるとかだといいですね。
深まる秋の毎日。
お兄ちゃんもあったかくして
栄養のある蛍のお料理を食べて
ときどき悪い誘惑に負けたりもしながら──
楽しい日々を過ごしていてほしいと思います。

青空

『さむいのだめよ』
ねえねえ!
おにいちゃんは
さむい?
さむくない──?
さむくないほうが
いいよ。
だって
さむいとそらが
たのしくないよ。
あそんでくれない、
あいすはない、
おにわにいかない、
おなかをださない、
おしりをださない、
つまらない!
そらを
だっこしてあったまろうとするよ。
そら、
もっとはしって
おいかけっこして
あそびたいのに
ひいても
おしても
つねっても
だーれもこたつから
うごかない。
ほらほら、
そらがよんでるよ。
たま
ころがしてるよ。
むしをさがそうとしているよ。
くつしたがぬげちゃっているよ。
たのしそうだねえ。
みんな
そらをおいかけてくれば
いいんだよ!
でも、
さむいともう
だめだからね。
あれ?
ああーっ!
あそこにいるのは
よくきこんで
さむさたいさくをして
そらがそわそわしているのをみつけた
こさめだ!
こさめだよ!
そらがてをひっぱると
ゆっくり
ゆっくり
きてくれる
こさめだよ!
こさめ!
そらとあそぶ?
あいすたべる?
おなかだす?
おしりだす?
ほーら
たまがころがって
さきにあそびにいっちゃった。
つかまえなきゃ、
おいかけなきゃ、
そら
はしってばかり
いなくっちゃ。
だれかのてをひっぱっていると
もっといいな。
こさめ!
たまよりはやく
はしろうね。

『まねき』
今日も我が家は──
まあ、言わずとも思っていた通り。
テーブルの上、
冷蔵庫から
キッチンの方へと
どこもかしこも
嵐が過ぎ去った後のよう。
飲み物のリクエストも多いでしょう?
コーヒー、
ホットミルク、
麦茶は用意できるけれど
あまりジュースや甘いものは
いけないし──
あっ、廊下の方も
今日もまた──
ま、言うまでもないことね。
上着は散らばり
靴下は跳ね飛んで
見る限りを覆いつくし
地平線の果てまで続く──ような気がするのは
散らかした後の景色。
きょうだいの多い家族に生まれたから
目にする眺めなのかしら?
もはや、この世の終わりのよう──
あるいは、見る人によっては
何もかもが目覚めるカオスのよう。
もしかすると
ここだけじゃなくて
どこの家でも子供がこんな風なのだとしたら
怖ろしいわね!
考えないことにしたほうがよさそう。
これは小さい子の走った泥だらけの足跡、
こっちは一目でわかるほど違う大きさをした
もう中学生になる立夏ちゃん。
かわいい子は
どたばた駆け抜けた後の足跡もかわいいのでは──
そんなことはなかった。
立夏ちゃんが、乱暴に走って
手を洗い
おやつとともに
どの飲み物を選んだか
あなたにわかる?
ジュースばっかりはだめよって
いつも言われているからかも
しれないけど──
いえ、立夏ちゃんのあの顔なら
細かいことを考えている暇なんて
少しもなかっただけ──
水道に飛びついて
浴びるように飲んで
コップに入れて
お水が一番おいしいんだと
世界の真理を発見したように語ったものだった。
先にお風呂に入るように言われておやつを置いていったけれど
その時に口を付けずに置いていったのが
テーブルの上のあのコップよ。
なみなみとこぼれる寸前まで──
へとへとになっていたわりに
器用なことをしていったわね!

小雨

『サンシャイン』
たいへん!
今日も我が家は大さわぎ。
家中を駆け抜ける足音、
天まで届くような笑い声。
そんな中で
いちばんみんながおどろく
大問題となると、
どうしちゃったの!?
立夏ちゃん!
ということ。
しなしなで
元気を失って
ピンとならずに
しおれちゃってる──
そう、立夏ちゃんは
ひまさえあれば
お日様の光を浴びようと背を伸ばしている子。
朝も昼も──
そして日が暮れて真っ暗になるまで帰らない。
あのまぶしい太陽に
頭からつま先までエネルギーを吸収しておかなければ
誰より明るい
あの笑顔も見せてくれないんです。
という説明は
少し大げさな麗ちゃんの表現も混じっているのだけど──
最近、急に寒くなって
冬服を出す片付けもしないといけないし
子供たちが外に言って風邪をひかないか
見ていないといけない。
立夏ちゃんは風邪をひかないから見張っていてもらうにはいいって
冗談っぽく言う子もいるけれど、
小雨はやっぱり立夏ちゃんも暖かくしてもらいたいので
手伝うこともあるんです。
立夏ちゃん──
たまにはお外で遊びたいって
すねちゃった。
ごめんね、立夏ちゃん。
でも寒い日が続いて
みんなも──小雨も心配なんです。
季節の変わり目の
こういうときに
無理をしない、
というのは
わかっているとは思うんだけど
納得していても
やっぱりまぶしい日の下で
体を動かしたい時もあるのだそうです!
いい子でよく育つには
立夏ちゃんの場合だと
必要なのだと本人は言ってます──
これから冬になって
くもりがちになったら──
そして、いつかやがて
立夏ちゃんがお嫁さんになって
新しい暮らしを始めたら、
いっつも晴れてばかりの空を見つけられるのでしょうか。
うーん、いつか立夏ちゃんと一緒にいる人が
太陽みたいに暖かくて
いつも元気をくれる人だったらいいのに──
あ!
そういう人なら──
あ、ううん、なんでもないです。
立夏ちゃんが早くいっぱいの日差しを浴びて
よく育つといいですね。
ところでお兄ちゃん、
ときどきは立夏ちゃんと遊んであげたい気分になること、
ないですか──?

真璃

『あっちの方向が天国』
おそろしいハロウィンの日も近づいてきて、
街にも家の中にも
うきうき楽しいホラーソングや
お菓子になって身を隠した妖怪たち、
仮装だかおばけだかわからない何かが
そこらじゅうをかけまわって
大変だわ!
廊下を走って来るのは
青空くらいの身長の
青空みたいな声でおばけだと主張する
白いシーツ。
前世で王妃としても活躍した
経験豊富なマリーの目で
見抜いたところによると、
おそらくあれは
きっと──
おばけね!
こわい!
でも、強くてえらいほうのおばけたちは
大きかったり
首を伸ばしたり
ふわふわ浮いたりしながら
おどかしてくるから──
あれはしたっぱの子かしら。
まだまだおばけ人生の一年目、
といった感じ。
お天気お姉さん一年生の海晴お姉ちゃまと仲良くなれそうね。
忙しい日々に見つけた
まさかのできごとで
しみじみ苦労を語り合ったり
とっておきの体験を教えたりしながら
夜も更けていくの──
なんとなくの気分で
どうでもいいお話もしたくなるくらい
少し──内緒話ならがやがやかき消されそうな
にぎやかなところがいいわね。
お料理もあったかいとうれしいかもしれない。
ちょうど、かぼちゃがなぜか至る所に
たくさんある時期だものね。
パーティーみたいに話も弾むことでしょう──
うーん、いいわね。
よくわからない知らないものたちが
仮面をかぶって
ふわふわ踊り
いつのまにか隣にいる時期。
マリーにも新しいお友達が
ひとりくらいできないものかな?
フェルゼンもこのチャンスに
なんでも話せる人ができたらいいと思わない?
あれれ、仮装用の服の山に埋もれて
ここにあるのは
だいたい高校生の男の子くらいの体格で
身に着けるとちょうどかっこよさそうな動物のお面と、
年長さんのおませで背伸びをしたがりな女の子にふさわしい
ポップでユーモアのある
カラフルなドミノマスク。
ああ──こんないいものを
いったいどこで
誰が身に着けるのだろう。
おばけが奪っていくのだとしたら──
時にはそういうことだってあるわよね?

ヒカル

『どこかへ』
白くて
ふわふわで
体重のない
あのおばけたちは、
この時期にやって来て
どこへともなく歩くという。
東へ向かうのか
西がいいのか
誰も知らないけど、
子供みたいに行ったり来たりするんだって。
誰の話だったかな?
それを聞いて──
ついこの間の海晴姉のことを思い出した。
海晴姉は大人で
いろんな知り合いがいるから、
話題も豊富で
話がどこへ行くのか──ときどきわからなくて
どきどきする。
スポーツジムに誘われて
行ってみたとか
占いの勉強だとか
大事なスキンケアとか
私のよく知らないことばかりを
教えてくれて、
毎日新しい出会いを見つけている。
同じ姉妹なのにずいぶん違う気がするな?
もう少ししたら海晴姉は
大人になるから、
難しい本にもやがて挑戦してみたいって。
知り合いの人たちが
面白そうに作っているお料理のレシピを
おだてて聞き出して舌で盗んで
持ち帰って来る──
けれど
まだ時間が経った先でないと果実酒を漬け込む趣味も
お酒に合わせる味付けも
できないから──
もうすぐだと待っているんだそうだ。
今の時期がそういう話題が多いから
あと少しして
またこの時期が来たら
ちゃんと、覚えていて教えてあげる約束をした──
その約束は必要なのかな?
楽しみで忘れそうにない顔に見えるけど。
おばけたちは長い時間をかけて歩き回って
どこかに落ち着く時が来ると
誰かに聞いた。
誰に?
誰だったかな。
海晴姉は面白そうに歩いて
新しい歌を子供たちに持ち帰ったりして
明日は何をして
どこに行くのか私も知らない。
知らないことばっかりの
いくつか年が上の姉のこと──
時間が来たら私も同じ年になって
その時には──
どうなっているんだろう。
今日も行く先に迷ってさまよう影を
みんなが遠くに眺めたそうだ。
知っている顔か──知らない顔か、
あるいは、きのうまでと違う顔をした私だったのか?
そうだったら面白い気もするんだけどな。

海晴

『未知との』
今日もキミの前にあらわれる
お天気お姉さん一年目、
天使海晴。
時候の挨拶なら
知らないことはないと
言えたらいいな!
もうすぐ訪れるハロウィンに
みんなの質問に答えようよ。
どうして仮装するの?
どうしてカボチャなの?
どうしておなかがすくのかな?
どうしてパンツが落ちているの?
ところであの廊下の先で
観月ちゃんと遊んでいるキツネのお化けは
なにもの?
いい質問だね。
疑問を持った子供のところへ
誰よりも早く
お天気お姉さんが駆けつけて
答えよう!
仮装するのは
やってくるおばけを追い返すように。
カボチャなのは
むかしアメリカへ伝わった時に
たくさんとれたから。
おなかがすくのは
蛍ちゃんががんばってカボチャと格闘している
いいにおいがするから。
パンツが落ちているのは
私が片付けが得意じゃないせいね!
観月ちゃんと遊んでいるのは──
きっと仮装しているほかの子だと思うよ。
かわいいって聞くから
見てみたいな!
ふー、もう質問はない?
小さな妹たちと弟の
試験がなかったら──
本番で答えに困っていたかもしれないの。
どうして?
なぜ?
あれはなんだ?
どこからやってくるのだろう──
見るものすべてが
珍しくて
謎めいている。
その真実を解き明かすには
大変な苦労があるかもしれないけれど、
そんなこと考えてはいられないの。
だって不思議なことに
出会ってしまったのだから──
いいな、とても楽しそうね。
私もそんなふうに
毎日ワクワク発見しながら
知識を蓄えて行かなくては
このお天気お姉さんの厳しい競争に
取り残されてしまうかもしれないわ。
あれ、海晴ちゃんどうして?
どうして新しい歌を覚えたの?
小さな妹に着せてあげるその服はどこから?
弟はもう小さくないって本当?
背が高くなったのはなぜ?
運動がいいの?
みんなといる私が
楽しそうなのはどうして──
足が自然に踊るのはどうして?
家族を見つけて
抱きしめたいのはなんで?
おなかがすくのはなぜかな?
海晴は答えを知りたいそうよ。
この世界の、
目に映るものみんなが
これから出会う面白いものかもしれないと
予感がするんだって!