青空

『みずまき』
えーいっ
じゃぐちにつないだ
ホースのさきをもったこどもが
おにわをはしからはしまで
どこまでも──
すばやくかけまわる。
たねからめがでるのは
おみずをあげる
おそらがいるから。
おそらがあめを
あげないから
おそらのしたの
そらがあげないと
おはなのめは
でないの。
かだんのほうで
シャベルをもったみんなが
そらちゃんこっちだよって
まっている。
やさしくおみずをあげてね、
つちをかぶせた
ちいさなたねに──
こどもはおみずをはこぶの。
あつーいひは
おとなもこどももねこも
のどがかわくからね。
どんどんものほしざおにはこばれていく、
ぬれたせんたくもの。
りっかみたいに
のどがかわいておみずにとびこんだでしょう。
のむならジュースがいいなって
ぜいたくをいいながら
みずぎのこどもたちは
おおよろこびのプールへ。
せんたくものは
せっかちだから
ぬれねずみで
みんながものほしざおにかけるよ。
よいこたちは
あわてない。
あつくなったら──
なつがきたら
そらはこんどは
プールにおみずをはこぼうね。
みんながまってる
わいわいこえがするほうへ
ホースをつかんで
どこまでもはしるよ。
おみずをあげた
かだん、
たねがめをだしたら
またおおさわぎをするの。
おにいちゃんと
おねえちゃんたちのいるところ──
そらはたのしいおおごえをききつけるよ、
すぐわかるよ。
そうしたらなんと、
おふとんからも
きのかげからも
おはなのはちをおいかけていても
どこにいてもとびはねて──
おそらよりはやく
おうちでいちばんに
みんながおおごえでよろこぶ
おみずをかけてあげるね。
きょうよりいっぱい
はこべる!

立夏

『バトルインフリーザー』
あー
暑かった!
桜の花びらも舞い落ち
足元に柔らかなピンクのカーペット。
いよいよ出会いの春のその先へ
進んでいく感じがして
今日は元気のない街のこいのぼりの代わりに
立夏がどこまでもはしるはしる!
目的がなくても走る、
楽しいことがあったらなおさらで
悲しくても河原へ大声を出しに走る、
街のどこでも
立夏の走る姿を見つけられない場所はないのだから。
といっても目撃情報はおうちの近くが多め。
ただいまー!
汗かいた!
のどかわいた!
あ、
ああーっ!
なんかいいにおいが!
あたたまりそうなにおいがする!
ふだんあまり飲まなくても
すてきな大人のおねーちゃんがいれば、
あるいはやさしいオニーチャンがいる子はきっとみんな
知っている──
いい香りがするコーヒーの深みのある黒を
すぐに見つけてしまうの。
おちつくような
うきうきするような──
眠いときとかによくカフェインを体に入れるよ!
リカはなめるだけだけど。
そんなに飲めなくても
でも、いいんだもーん。
春本番のぽっかぽかな日が続いて
冷蔵庫には麦茶がみんなののどを潤すのを
待っていて──
あれっ!
み、みて
オニーチャン!
くもりの日で
走り回るわけではない大人のみんなには
テーブルの上にティーポットが用意されて
冷蔵庫はすっかり空いた分の
食材が、
これでもかと!
大きな体で居座っている。
タッパーのお肉やお魚、
どうも野菜室に入りきらなかったらしいピーマンに白菜、
家族の体を作りがっちり堅く健康を守るおいしいものが
いっぱいで──
意味もなく走りすぎたリッカののどにしみこむ麦茶が
まったくない。
うえーん!
お茶を冷ますのを手伝ってー!
リカがついでるあいだ
お話し相手になってくれたらいいヨ。
やがて今日の報告が一通り終わり
ひといきつくころに
お茶は程よく冷めている──
もしかすると、ティータイムにおつきあいしてくれる
オニーチャンのおしごとは
さめすぎてぬるくならないうちにお知らせすることかもしれないけど──
なんちゃって。
椅子を隣に並べて
ふたりの席はこちら。
汗くさくても近づいてしまうのが
とめられないリッカなのを
わかってネ。

『風の通り道』
今日は暖かく
過ごしやすい日だったな。
いつの季節もさりげない調節で役に立つ
黒い肩掛けも──
そろそろ薄いものに変えたほうがいいのだろう。
冬に戻ったような日が続く
行ったり来たりのせわしない春のはじまりも
もうすぐ過去のものとなり
どこまでも限りない宇宙のどこかへ消え去ってゆく。
これからは汗ばむ初夏の気温が
私たち家族を包む日が
もうすぐそこに来ているのだな。
日なたで読書を楽しみ
わずかな休息を求めて目を閉じた闇に身をゆだねると──
なぜか退屈をもてあましているように見られ
タンスの入れ替えとほこりっぽい押入れへの旅を
求められる謎の現象も
きっと過去のゆかいな思い出となって
少しだけ穏やかになったこの風に塵と混ざり合って運ばれるのだ。
いつの世も、どんな時代も
うれしいものは
春の訪れ──
そして春が予感をくれる
まぶしい光の降り注ぐ
まるでひとときに情熱があふれ
燃え尽きてしまうかのような
ぎらぎらした輝きの季節に
きっとみんなが腰を落ち着ける場所を求めて
探し出す止まり木を
今から見つけ出しておこうと思うのは
自然な考え方といえるし
そのような先見の明を持つ者が
人より少しだけ早く
そよ風に包まれる静かな時間を楽しめるようになるのも
春らしさの贈り物といっていいだろう。
おろしたてのマントに身を包んでさすらい
今日見つけた小さな日陰は
近くの窓から揺れる木の枝が眠りを誘うような
美しい片隅で
そこにいて春を感じると私は──
まだ風が少し冷たいのを知り、
は、はーくしょん!
衣替えは少し早まったかな──
もう少し心地の良い場所を見つけに
影を渡る日々は続く。
ほんのわずかに疲れを感じて
目を閉じたときには
よく知っているみんなの声が聞こえてるのも
良いものではないかと思う──

夕凪

『ときめきデパートサンデー』
今日は日曜日!
朝から夜まで
どんな時間もまとめて
みんなまるごと
夕凪のもの。
一秒だって無駄にはできない!
だから夕凪は
みんながお買い物に行こうって誘うのを
きっぱり断って
好きなことをするために公園へ走ったの。
今日はあんまりピッカピカのお天気じゃないけど
公園はいつだって楽しい。
ボールひとつ持っていけば
ドッジボールができるんだもの。
一日中ボールを追いかけて遊ぶのが
日曜日の醍醐味だって
子供はみんな知っているんだから。
花びらが開いてかすかに揺れる道を
なにもかも全部吹き飛ばすくらいに
全速力で!
最短距離で!
世界記録で!
それでなおかつ
安全運転で!
目が覚めたらなにもかも置いて
子供は公園へ向かおう!
早くしないと
仲間に混ぜてもらえないぞ。
と思っていたんだけど
なぜか今日は
朝から夕凪がいるだけ──
風もないし寒くもないし
外に遊びに行かない理由なんて
小学三年生にはひとつもないのに
どうして!?
だれもいないの!?
夕凪、待っている間の一人ドリブルや
指先でボールを回すのがうまくなっただけなの。
日曜日なのに!
夕方くらいから来た子や
買い物から帰ってきたおうちのみんなと話してみると
新学期が始まって
足りないものや忘れていたものが見つかり──
大事な日曜日が来たら朝から何もかもすべてを忘れて
買い出しに行く子が多かったんだって。
そっちかー。
あと、ゴールデンウィークの計画を立てるのも大詰めで
旅行の買い物の下見などがあるとか。
夕凪はどこに行くにもそんなに荷物はいらないのに──
足りなかったらみんながいるし
なんとかなることばっかりだし。
待ちぼうけだった公園の一日だって
お兄ちゃんにボール回しを見せて
驚かせてあげられる、
しかもお兄ちゃんとボール回し競争までできると思えば
こんなにすてきな一日はない。
朝からずっとずーっとはできなかったけど
遊び始めたら取り戻せる
夢の日曜日。
今日は眠るまで遊んで
夕凪の日曜日が終わる最後の最後の瞬間まで
休日を遊びつくして
一緒にいようね。

吹雪

『ティア』
私たちの家には
季節や天気など外部的な条件に大きく左右されることなく
みんなが喜ぶメニューというものが存在します。
そのうちのひとつがカレーライス──
今日はお手伝いに不満を言うものは誰もいません。
紅潮した頬で、肩を回して
争うように並んで流し台で手を洗った後は
どれだけおいしいカレーを作れるかは
自分の腕にかかっていると
その場にいる全員が考えているみたいに
熱意がキッチンに充満します。
にんじんとジャガイモの皮むきも
食器の準備も
順調に進んでいく工程の中、
ただ一つだけ私たちの前進を阻む壁となるのが
誰もが苦手とするあの──
タマネギをスライスしたときの刺激。
あらゆる人間はタマネギの前では平等に
目と鼻につんとした刺激を知る。
まな板と向き合えば残らず
涙を流さないものはなく
試練を乗り越えることを強要されないものはない──
と、これまでは共通の認識でしたが
私くらいの年齢でしだいに包丁にも慣れ
今日はじめてタマネギと向き合ってみると
生まれつきなのかあるいは規則的な生活が良いのか
目にわずかな刺激を感じるだけで
涙も何もいっさい流れ出す気配がない──
他のみんなとは違って一人だけの
不思議な体験をしました。
スライスの均一性も性格が反映していると言われ
タマネギを切るに家族で最も適した固体であると
自分でも認めないではいられません。
これからはカレーライスの日に貢献できる作業が
たいへん増えていきそうですね。
しかし、そのまま包丁に気をつけるようにと渡された
鶏のむね肉は──
固さが全体にわたって変化が微妙に変動し──
手元から逃げるように包丁の刃を渡ります。
一定の大きさに切るには
あまり条件が良くないと感じました。
次のカレーライスの日が来るころには
包丁を入れる部分が少なくて済む傾向がある
シーフードを提案できるよう
これから少し調べておこうと思います。
今夜──
春風姉から借りた料理の本は
大きく重く写真も多く
情報量が想定を超えていて
予想していなかった原因によって
夜更かしをする日になりそうですね──

星花

『ふたりハピネス』
今年度も星花の通う
カンフー教室は絶好調!
体を動かし、汗を流し
決して毎日が
必ず強く成長するとは限らなくても
あきらめないで続けたらちょっとは変わるかもしれないと
鍛錬を続けること──
それはとっても楽しいことだと知る日々です。
運動すると毎日食べるものもおいしいし
好き嫌いもしないほうかも──
この調子で育っていけば
来年、再来年にはどれだけ伸びているか
希望が膨らんでいきますね!
このままカンフーだけに限らず
いくつも練習をして
体を強くしていったら
もっとお兄ちゃんの力になれるかもしれないね。
たとえばなんだろう、
柔道とか
おすもうとか──
プロレスとか!
挑戦してみて
その先にやがてオリンピックを目指してみるのも
目標に向かう充実感があっていいのかもしれない!
2020年には間に合わない気もするけど
それはそれとして!
あ、そういえば
前からちょっと
ひとつの競技に
なんだか他より
興味だけはあったの。
それが気持ちよさそうに
どこまでも駆けていくことができそうな
長距離マラソン
ラソンはいつでもスポーツ観戦の花形競技ですよね。
自分で参加する機会も多いし──
練習にも特別な道具や場所も要らないし。
難しいルールもそんなにないから
練習相手を探すのだって
小さい子とも大きなお兄ちゃんお姉ちゃんとも
いっしょにできるかもしれないし。
それに、星花がもうちょっと
努力をして──
負けない根性を身に着ければ
同じ練習をしてお兄ちゃんについていくのも
もしかしたら夢じゃないかもしれないって気分になれるもの。
並んで走って
その先に──
二人でたどり着くゴールがあるの。
これまでは背中を見つめていた
お兄ちゃんが星花をいつも引っ張って
助けてくれるように
いつか星花もお兄ちゃんの力になれたらな。
ふつつか者ですが
どうかこれからもよろしくお願いしますと──
いつもいつも星花は大好きなお兄ちゃんに伝えたいんです。
いつも星花の変わらぬ気持ちがあること
どうか覚えていて──忘れないでいてください。

綿雪

『やさしい声』
日差しが傾いて
山の端に落ちて
だんだんあたりが暗くなるころ
夜の闇にぜんぜん似合わない
明るい声が
玄関のほうから聞こえて
家の中はぱあっと明るくなる。
お姉ちゃんたちやお兄ちゃんは
学校がある日に帰ってくる時間は
このくらい。
何かいいことがあったみたいに元気な声で、
たくさんお土産話を持って少し疲れた声で、
ときどきただいまの声を玄関においていこうとするみたいに
大急ぎで廊下を駆け抜けていったりして
にぎやかな声は毎日必ず
待っていたユキの胸の中に
明るい火を灯す。
みんなが帰ってくるのを
ずーっと待っていました。
ちゃんとよい子で待っていました。
でも、ひとつ心配なことがあったの。
みんなが寒がっているときにどんどん上着をかけてあげて
きのうは寒そうにしていた海晴お姉ちゃん。
風邪を引いていたりして
大変な一日を過ごしてはいないでしょうか?
風邪の引き始めは
すばやい対処が大事!
だからみんなで
海晴お姉ちゃんの帰ってくる声が聞こえたら
いちばんを競って玄関まで走り
お気に入りの服をかけたり
冷えた頬に手を当ててみたり
疲れがすぐ取れるように肩を揉んであげたりしたくて
海晴お姉ちゃんの右手を狙い左手を奪い
癒してあげられそうな場所を取り合った後
100パーセント笑顔のまんたん元気に回復するのを見届け
ほかのお姉ちゃんたちにもこんなにいいことを届けたいと
疲れた姿を探しに駆けていくのです
ユキはそんなに早く走り出せないから
最後まで海晴お姉ちゃんの肩を揉んで
そんなふうにいつものお礼をしたいんだと話していたけれど
はたしてみんなはそれから
どこに行って誰から
大好きな家族を癒して回ったのでしょうか?
お兄ちゃんのところにもみんなはあらわれた?
遅れてしまったけど
これからユキが向かいますね!