『0001』
季節はすっかり春めいて
のんびり過ごすのも
春らしい用事をこまごまと進めるのも
いい季節になった。
身を寄せ合う寒さの時期を乗り越えて
これからは誰にとっても
自由な時間を増やすことが容易になるだろう。
家の中で凍える時間はもうあまり多くなくていいのだ──
だからなのか、みんなの話を聞いていると
せっかくの春がやって来たのだから
新しいことを始めたいと希望する子も多いようだ。
いいことだ──
動き出すエネルギーがなければ
宇宙の形は一つも変わらない。
だが──誰もが願い
夢に見るのだが
そう簡単だとはなかなか言えない。
なにしろ暖かいために
のどかにゆっくり過ごすのにも向いていて
昼寝もはかどる──
春の陽気が人のすべてを許容し
前に進む者の背中をそっと押してくれるというなら
それはのんびりする日なたを見つけ
気持ちのいい午後に長くとどまるという願いまでも
明確な形にして私たちの前に提示し、
全てが叶うような喜びを与える──
そういうことをするのだ、あの春というものは。
厳しい冬の後だ、
体が日差しを歓迎しているのから仕方がない。
こうして──
なんとなくいろいろとうやむやになりがちでよくわからない
のどかな日は続く──
でも、誰にとっても休むことは大事だからな。
平和で落ち着いていて──
それは少しも間違った過ごし方ではないはずだ。
ただちょっとだけ──
わくわくしていたわりには代わり映えがない毎日だったな?
という不思議な感覚が残るのみ。
別に今すぐ──変わらないといけないと決まっているわけでもなし、
宇宙の隅のちっぽけな星にとらわれる存在に
できることといったらたかがしれているのだ──
そんなふうに前に進むエネルギーを持て余していたら
ときどき──ごくまれに──
無限の試行回数を重ねられる永遠のように朗らかな──春の日が
私たちに特別な景色を見せることもないでもない。
たまにはあるのだろう──いやでもそうなる時が──
私たちを動かす力の正体はまだ誰も知らない。
ただ暖かい陽気と、うずうずする気持ちが今はあるばかりだ──