海晴

『アルンハイム』
お姉ちゃんは忙しい。
いっぱいの妹のお世話をして
見て回りたい──
自分のこともおろそかにできない。
大好きなたった一人の弟と
過ごす時間も大切にしたいし──
よく食べ、よく運動し勉強して
大きくなっていかなくては
年上として手本にならない。
とはいえ──
季節は春。
することがいっぱいあるのは確かだけれど、
遊んでいる子供たちの声は家の中、
キッチンは一休みの時間。
にぎやかな子も
遊び疲れて日の当たるところでまどろむ頃──
さっきまで部屋にこもって
掃除に片づけ、
気分転換を必要とする今は
大家族で過ごすお姉ちゃんでも
ぽっかりと予定が空くことだってある──
のどかな春が来たのだから
午後をゆったり過ごす日もやってくる。
どうしようかしら?
それなら、たまには一人で
運動がてら──
陽の差す庭を歩くことだってできるわ。
今日の庭はもうすっかり暖かい。
ついこの間までかたく閉じこもり
厳しい冬を耐えていたつぼみでさえ、
何も迷わないで開いていく──
庭中がそんな眺め。
よく手入れをするかわいい家族たち、
草むしりだって最近は手ごわい相手に
がんばっているみたいだし。
いつのまにか、こんなにも季節は
私たちの景色を美しく変えている。
人間には、庭を眺める楽しみがあると
昔の人は言ったそうだけど
確かにその通り。
たまには立ち止まって
こんな庭を体験しなくては
もったいないもの──
きっとキミも、小雨ちゃんをほうっておけなかったり
氷柱ちゃんにせかされたり、
ときどきはヒカルちゃんに手を引かれて走ったりしながら
私が見つめる同じ庭を
知っているのでしょうね──
春の優しい時間は
まるで終わりを知らないように穏やかに続く。
でも次は──誰かを誘って眺めたい景色だと思ったよ。
生まれた時から、なんだかばたばたしていないとかえって落ち着かない
にぎやかな家族のお姉ちゃんなんだもの──