夕凪

『対決!』
お兄ちゃん……
どうしよう!
夕凪、マホウ使いの子孫だって
前から何度も
何度も何度も
当然みたいに言ってきたけど
考えてみたら
あのね、同じマホウ使いが相手だと
夕凪がそんなに優秀なほうのマホウの使い手かというと
実はそうではなかったんだ……
修行中ってかんじ。
でもね
相手がサンタさんなら
そりゃあ勝てるわけがない!
なにしろ
おひげのおじいさんだ!
と、最初から勝負にもならなかったんだけど。
だってさあ
春風お姉ちゃん
ずるいんだよぉ!
どんなマホウが使えるかって
小さい頃から
必ず出会えると信じていたから
クリスマスの贈り物には
良い子の春風のところに
王子様がやってきてくれました!
なんて言われたら
それはすごいマホウだ!
って感心しちゃうじゃん!
しかもそれって
春風お姉ちゃんの力なのか
よくわからないじゃない!
夕凪だって
お兄ちゃんが欲しいなあって
思ったことあるもん……
本当に
やってくるんだなあ!
まさか
やってくるものなんだなあ!
お兄ちゃん。
でも別に
信じたわけじゃないし
術を使いもせず
七夕の短冊にも書かず
クリスマスにお願いしたことだってないから
本気の春風お姉ちゃんには
そりゃかなわないよぉ。
運命の人に出会えますように!
ずっとずっと
祈っていたんだって。
ああ
夕凪の七夕のときの
いたずらしたのが見つかって怒られませんように!
とか、
星花ちゃんが大事にしていたのに
夕凪が濡らしてしわしわにしてしまったご本を
サンタさんおねがい!
みたいなのとは
だいぶ違うよね。
しかも
マホウが使えたらいいなあっていう話から
どっちが上か決着をつけましょう!
おやつタイムからそんな流れになっていったのは
あんまりぱっとお天気にならない季節だと
なんとなく気持ちもぱっとしないし
洗濯物も乾かないから
どうしよう
晴れたらなあ
じゃあ
夕凪なら
この冬、世界の誰よりも春風お姉ちゃんをぱっと笑顔にできるかな!
思いついてみただけであって
まさか後から聞いたところでは
実は春風お姉ちゃんも相当の実力だったことが明らかになり
これは本気でやってみても
ちょっと厳しいかもしれないぞ……
びびってしまったわけで
これで夕凪が
お洗濯物の解決をなんにも叶えてあげられなかったらどうしよう……
とっても申し訳ないよ!
春風お姉ちゃんが自力で叶えてしまえるなんて!
ねえ、お兄ちゃん
何か春風お姉ちゃんの弱点を知らないかなあ?
そのすきに夕凪が
観月ちゃんらしいおまじないとか
星花ちゃんに歴史の故事を教えてもらったり
吹雪ちゃんの知識を分けてもらったりしながら
ついにお天気を呼んで
なんとかしよう!
お兄ちゃんの助けがあれば
うまくいくとは限らない半人前の夕凪でも
どうにかなる気がするよ。
こんなふうに
お兄ちゃんの力を借りる日が来るような気が
ずっと前からしていたような
そんな気分までしてきたよ!
意外となんとかなりそうな
なんとなくいい感じを
夕凪もお兄ちゃんと
一緒になって喜べたらなあ!
いいでしょ?
たぶん、お兄ちゃんが協力してくれるだけで
ぜんぶ解決しそうな
そんなマホウがとっくに夕凪にはかかっているの。