小雨

『私のお人形』
ちびちゃんたちと
おままごとをしたり
お人形遊びをしていると
その世界の中にすっかり入り込んでしまい──
見ていないところでお人形が動き出したらどうしようと
話をしています。
動き出すお人形のお話はクリスマスの贈り物の子たちですね。
人間に見られないように気をつけて
踊る子たちのお話です。
小雨のおうちには──
かわいくて素直そうなお顔のお人形ばかりで
そんないたずらっ子はいない気がします。
でも、そう伝えてみても
動きそうな気がするよーって意見を曲げないのですから
子供たちだけが持っている直感のようなものでわかるのかも。
なにしろ、小雨がめがねをなくして
最後にかけていた覚えのある場所を順に回っても見つからなかったところを
まるで妖精の助けでも借りたような摩訶不思議な謎の力で
メガネケースに入れて小雨のスカートのポケットにあることを
教えてくれるのですから!
それは目線の高さが関係しているのでは、ともちょっと思ったけど
本人が言うのだから魔法みたいな力も使えるんじゃないかな……?
小雨が今のさくらちゃんたちみたいに小さいときには
こんなに勘がよくて知恵があったかなあ?
でも、眠っている隙に大好きなお人形たちが
お姉ちゃんたちに遊んでもらっていたときと変わらずに
いきいき動き出して楽しんでいるんじゃないか、
残念なことに小雨にはそんな秘密を見せてくれないのかなと
考えたことがあったような──
少し遅くまで眠らないでお人形を見つめているんだと
むかーし──まだ小さい小雨も
絶対そうだと自分を信じてがんばったことがあったかも──
そして、幼くて忘れているだけで
音の消えた深夜、人間なんかの誰にも見られていないと思ったドレス姿のお人形たちが
くるくる足を伸ばしてスカートを翻すことも
まったくないとは言い切れないかも!
そうだとしたら、小さなみんなの言葉を聞いて
かわいい人形が踊りださないなんて
そんなことがあるわけがないもんな、と考えはじめた理由となりそう。
それから子供たちは、自分たちが眠った夜にはおままごとみたいに
小雨がお嫁さんになってお兄ちゃんと仲良くしている気がすると言い出します。
だったらいいな、とも思うし
違いますよって教えてあげても聞かないから
やっぱり小雨は夢の中かどこかで
お兄ちゃんに夜の間もご迷惑をかけてしまってますね。
本当にお世話になってばかりで──
明日もみんなはお兄ちゃんと遊びたいみたいなの。
小雨もお兄ちゃんたちのお邪魔にならないように
がんばっていたいと思います!