『雨の楽しみ』
地球の上の
日本という場所。
四季も天気もうつろうのだから
いつまでも続く快晴なんてあるわけがない。
それでも──
遊びに行きたい気持ちを抑えるのは
誰だって難しい。
しとしと冷たい放課後、
仕方なく早く帰ってきたら
小さい妹たちは相手の反応にかまわずに
次から次へと飛びついてきて
遊んで欲しい気持ちを一片も隠さない。
ある方向から手をぐいぐい引く子は
おままごとのお誘い。
逆から引っ張られると
そちらはサッカーのお誘い。
サッカーって。
家の中よ?
まあ、こっちが何も言わないうちから
プロレス技を足に仕掛けようとするよりはまあ──
ましというか、あんまり変わらないか。
まったく。
面倒見がいい春風姉さまや小雨ちゃんだって
遊びつかれてほかほかしたお顔で休んでいるのに
私が上手に相手をしてあげられるわけないでしょう。
というか
もう少しのあいだ電車に揺られて、
できればずっと永遠にレールの続くまで
遊びに行きたかったのは私のほうよ!
どこにこのやるせない気持ちをぶつけたらいいの?
だから暗くなった雨の夕方は
大騒ぎの子供たちと電車のおもちゃで遊ぶ時間。
私が年上として見ていてあげているんだから
ひっぱりっこしたり
あぶない使い方をすると
すぐお叱りが飛んでいくわよ!
ふふっ
子供たちも、雨の日でもいっぱい遊んで欲しいっていうのは
だいぶ無茶を言っている自覚があるみたいで
意外となんでも言うことを聞くものよ。
少なくとも、遊んであげている間はね。
雨雲の下のめんどくさくてつまらない日にだけ
ちょっと新鮮な眺め。
いつもと違う素直な子たち。
良い子にしていれば
春風姉さまたちもまた遊んであげたくなるに決まっている。
そうなったら、良い子達と一緒に
おやつのおねだりをしてあげてもいいよ。
おなかが空いたーってお願いするの。
強引に私を誘わなくたって
あんまり引っ張らないでも姉さまたちは優しくしてくれるわ。