『冬篭り』
寒さは日々厳しくなる。
もう冬を眠って過ごす生き物たちは
ねぐらに食べ物を運びきっただろうか。
12月がもうすぐそこまで近づき
人々が慌しくしている時
寒い季節を越えるために彼らは眠る。
まったく合理的だ。
だが、寒い時期もささやかな楽しみを見つけて
ぬくもりを探して乗り越えようとする
人は冬眠する生き物と比べても
冬に強いということになるのかな。
暖かい頃まで寝過ごしてしまっては
それぞれの豊かな時間を過ごす冬休みはたちまち消える。
たとえば柚子湯。
たとえばクリスマス。
そしてまた
お正月のおもちが私たちを待つ。
しんと冷える清浄な空気を吸い込む
あの澄み切った年末年始は
まあ、近いようでまだもう少し先の喜びだ。
それまではしっかりと協力しあって
この落ち着かない年末を、気を引き締めて乗り切ることになる。
聞いた話によると
クリスマスツリーのもみの木は
冬も葉を落とさない生命力の強さをあらわしている、
という説もあるとか。
どうやら人間と比べて冬に強い生き物は他にいるのだな。
しかし私たちが本当にクリスマスに期待しているものはおそらく
飾り付けられたツリーよりも
冬の厳しい一日を共に生きる者たちだ。
緑をつける強さよりも必要なものが
私にはあるということになる。
寒い日に本当に求めているもの。
だけど、季節を感じるのは確かにいいものだけれど
柚子湯の時期には近くの銭湯に行こうという話は毎年出ていたのだが
ついに今年はこの寒さの真っ只中で風呂が故障してしまい
修理が終わるまで一週間。
季節感を味わう以前にしばらくは銭湯に通う必要が出てきた。
オマエもしばらくはたった一人の男湯だな……
はたして冬を乗り越えることができるのだろうか。
巣に潜み、寒さから隠れ逃れる道は絶たれたと言っていい。
冷気が人を蝕むのか、寂しさが命を危機に追い込むのか
いや、寒さにも孤独にもオマエを奪わせはしない。
できることは特に何もないわけだが
暖かい風呂がまんざら嫌いではない姉を持つ一人の男として
堂々と胸を張って男湯に歩いていける権利を
オマエは持っていると思う。
まあ一週間の辛抱だ。
片道十分の距離が冷えすぎないように
しばらくは寒さがこれ以上進まないといいのだが。