『ワンスモア』
子供の頃にできなかった
悔いが残る春の日の思い出。
桜の並木道は
雨が降る前に見に行けなかった。
春らしい新しい装いを増やすのも
そんなに思い通りにはいかないのは当然。
そして何より
私はどうしても一家の長女。
頼れる人と
肩を並べて──
いちばん好きな景色を眺める、
そんなことができるとしたら
その人はどんな感想を言うのな。
私と同じ気持ちなのか、
それとも思いがけないことなのか
もしかしたら
黙っていても、心が通じるような思いだったりして──
なんとなく夢を見ていた。
でも、そんな日がなかなか簡単には
やって来るものでもないと知っていた。
人間の思い込みっておそろしいわね!
今では、わがやには
みんなの頼れる長男がいて、
私からしたらちょっと年下だけど
家族みんなの頼れる男の人。
もう、こんなふうに
きれいなつぼみが開き始めた道を
手をつないで寄り添って歩くと、
キミのいなかった時の記憶が
だんだん遠くなって思い出せなくなる──
もう、今ではこれが
私たちの春の風景。
それにしても、小さなころから
お兄ちゃんがいる毎日ってどんなものなんだろう?
あんなに欲しかった
楽しいお出かけのお誘い、
春らしい服を繕ってあげてみたって
お兄ちゃんと遊ぶのと比べたら
ぜんぜん興味がない。
キミがいてくれるだけで
楽しいことばっかり──
そんなお話をよく聞いているわ。
お兄ちゃんは
そんなふうに楽しいとき──
同じ気持ちでいてくれるの?
気が付かなかった意外な発言があったりして?
それとも、もしかしたら──
一緒にいてくれるのに
私には、まだ一緒に過ごす日々を
どんなふうに言葉にしていいのかよくわからない。
確かなことといえば
今年も春が巡って来たということ。
楽しい春を
私たち家族みんなで過ごしているということ──
子供たちが積み重ねる思い出よりも
大人になってからのほうがいろんな発見があるなんて知らなかったな。
こんなに幸せな毎日があるということ──
春の日は曇りがちになることも多くて、たまに冷え込むこともあるの。
それでもずっと──
どんなときも一緒にいようね。
これからも。