真璃

オーバーテクノロジー
女の子だから
洗ったお靴をはいて
爪もきれいにしたら
あとはすてきな笑顔で
ほがらかに挨拶をして出かけるのよ。
お靴はまあ
舞踏会にいけるようなのをいつもはいているってわけじゃないけど
爪はきちんと短く切ったから
手をつなぐとか、音楽に合わせてダンスとかでエスコートしてもらう分には
これで万全というところね。
ところが
幼稚園までたどりついてみると
せっかくの靴は
溶け残った雪の名残でべしょべしょ。
白い靴下にも泥が跳ね飛んで
驚くことに、スモックまでもが茶色に汚れていたわ。
元気に歩いてきただけなのに
どうしたらここまで汚せるの?
これもマリーらしいある種の特殊技能なのね?
美しいほほえみとこぼれる声
やさしいくちびる
そして、くじけずにいつでもあふれる元気。
ほぼ淑女の条件を備えているということで
誰も異論はないわね!
まだ憧れの小学校も経験していないんだから
本当は明るく元気で、なおかつ汚さないのが理想と言っても
少しは仕方ないわ。
そのうちなんとかなるでしょ。
でも、おうちに帰ってきた後で
小学校を立派に卒業したはずの立夏ちゃんが
靴下に泥が!
白くてお気に入りの制服にも
ひとつ泥はねが!
嘆いていたから。
マリーよりはましになったといえど
まだもう少し大きくなる必要がありそうね。
海晴お姉ちゃまも
靴下の汚れは避けられなかったようで
洗濯かごの前で確認しながらきゃあきゃあ悲鳴をあげていたから
さらにお靴も守りたいとなれば
ああ、行く道ははるか遠いわね!
それでこそマリーが進む甲斐があるってものね!
気長な話になりそうだけど。
でも、お食事の時に隣に座って
カレーがおいしいおいしいって大喜びのさくらちゃんが
ぽろぽろこぼして、服の汚れが今日いちばんのいっとうしょう、
どんなに元気な誰よりも豪快なのを見つけたら
その迫力の前では
ちょっとやそっとのことは
なんでも許せる大きな心を持てそうね!
まあいいや、って。
さくら。
ハンカチよ。
ええ、マリーの目に間違いはないわ。
年長さんになるころには
こぼさないで食べるのも上手な
マリーもかなわない大人っぽいレディになっていると。
明るい笑顔とばつぐんの元気は誰もが認めるさくらだから
たぶん間違いはないでしょう。
淑女の条件を見つけ出し
マリーだけの誰も追いつけない未知の発見だと思っていたら
意外とみんなが通った道で
すでに追いつかれつつあるこの感じ。
そうよね
行く道が困難だから
それでこそマリーが選ぶ
甘い刺激的な日々になのよ。
さくらのかわいいハンカチも
マリーのおしゃれなハンカチに
いつか変わるのでしょうね。
その時は、さらにきれいになったマリーのハンカチがあるんだわ。