メープルシロップ
いつだって生きることの基本は
食べることに他ならない。
夢だけを見て生きようとも──
清らかであろうとしても──
何があっても、おなかがすくのにはかなわない。
力をつけなければ、
前を見て足を踏みしめていかなければ
どんな道も歩んでいけないのが
人生というもの──
それが私たちであることは
もはや何物でも変えることのできない真実なの。
それとも、将来的には変わっていくのかもね?
まあなんでもいいけど。
だから、おいしいものがいっぱいの秋に
みんなが喜んでいるのはいいと思う。
その気持ちはわかる──
でもね、秋が来たからって急に
今しか食べられないものばかりを望むとは
限らない──
なんか、
殻もあるし
骨もあるし
手間もかかるし
時間もかかる──
そういう食事が必要な時期があるのかもしれないけれど
たぶん今の私はそんなに
必要としていない気がするの。
ふつうの──
変わりない食事ができればそれでいい。
テーブルの上を見ただけで
変わったことも
特別なことも知らない
静かに日々を重ねる生き物になる──
ときめくとか、わいわい大騒ぎとかには縁もなく
今日もこの時を迎えたことだけを
心の中で静かに喜ぶことができればいい──
小さい子が多い家はなかなかそうはいかないのかもね。
というわけで
食べなれたものがいい気分の時はある!
と、なんとか姉様たちを説得できたので
おやつの時は自分たちでホットケーキをまぜたり焼いたりする
そんなメンバーがごく少数、集まりつつあるわ。
窓からの景色もどんどん変わっていく時期、
朝晩の寒さに気が付いてびっくりすることの多い時期──
そんなに、つられて急いで過ごしていても仕方がない。
何をするにもいい季節なら
自分のペースで過ごすのも、ふさわしい生き方のはずなんだから。
と、思ってはいるんだけど。
いつも好きなものを好きなだけ食べたい気分なのだと、そう見られることもあるのは心外だわ。
いや、まあ別にいいけど。