『テンプテーション』
もういくつねると──
冬至のゆず湯！
みんなの冬休み！
クリスマスパーティー！
気持ちもさっぱり大掃除。
おそばを食べながら、鐘の音を待つ間の紅白歌合戦。
今年のおそばはどんなてんぷらがいいかしら？
きっちり片付く予定の締めくくりの日まで活躍するのは
紅白模様のおめでたいかまぼこ。
今年も一年お疲れ様でした。
かまぼこさん。
また来年も最初の日からどうぞよろしく。
かまぼこさん！
もちろん、もうすぐ
指折り数えて待っているお正月がやって来るの。
静かにしていたら聞こえないかしら？
何かがはじまる新しい年が
着々と近づいてくる足音。
むむむ？
これは、おせちを作るいいにおい？
おしょうゆだから……
ごまめね！
今夜には試作品が並ぶのかもしれないわ。
お正月の準備とクリスマスメニューと
冬を乗り切るあったか料理で
お祭りのようににぎやかな時期。
それから試験を乗り切ったごほうびメニューと
通知表でちゃんといい成績を持ち帰ってくるみんなのためのごほうびメニューと
一年しっかりがんばってきた家族たちにも
元気に明るく笑顔でいられた一年に感謝と
ひたすらもうどさくさや勢いで
とにかくおいしいものをたくさん作れるチャンスだから
後の細かいことは新しい年に任せることにしましょう、
といった様子のホタお姉ちゃま。
たのもしいわ！
まあ、浮ついてばかりもいけないし
地に足の着いた当たり前の生活を送るのも大事なことだけど
そのあたりはマリーがだまっていても氷柱お姉ちゃまにお任せで
ちゃんとりっぱに七面倒くさくて小難しいお仕事をしてくれるし
２０人もきょうだいがいたら
年上になるほどしっかりしなくちゃ！ みたいなブレーキが働いて
なかなか冒険するのも敬遠しがち。
そんなとき、華やかで明るいことも地道な生活と同じくらい大事だと思うマリーは
まだ小さい子のポジションを活用して
クリスマスが楽しみ！
冬休みもみんなといられるのっていいわね！
寒さで縮こまってばかりになんてさみしいわ？
うるうる。
女は誰もが生まれながらにして女優だから
こんな寒くてお部屋に引っ込みがちな時期こそ派手にのびのび
声も動きも大袈裟なくらいでいい。
女優業六年目、そろそろ中堅どころの頼りになる先輩として
実力の見せ場がやって来たという感じかしら。
大人の分別を言い訳にして新たな挑戦を忘れかけたら
それは誰にでもある時期で
なかなか自分ひとりでは気がつかないみたいだから。
もちろん悩むのはいつでも成長のチャンスよ？
でもせっかくの旅立ちの馬車を逃してしまう危険もあるの！
行き先のわからない汽車の旅。
見慣れぬ建物が並ぶ景色を窓から眺めるバス旅行は
止まりますのボタンは気分次第にどこで押してもかまわないの。
歩いてでは決してたどりつけない場所を行く旅程は
水平線に囲まれた大海原の船旅か
それとも雲海を泳ぐ銀色の翼かもしれない。
うん、まあ冬休みの旅行の予定はないみたいなんだけど
想像力は自由なんだから！
大人しく地味でいいと思ったときから地味になる。
じゃあ逆に高い志を持ったらその瞬間から世界が変わるかというと
そんなダイナミックな出来事はそう起こらないで拍子抜けしちゃうんだけど
なりたいと思って目指しているものに。
夢を見たその瞬間から
だんだんゆっくりちょっとは変わっていくのかもしれない！
だったらいいな？
期待するだけなら今すぐできるし
だめだったらその時はその時。
大忙しで慌しくって時間に追われてめまぐるしくて
イベントだらけになりそうな年末年始をますます盛り上げるくふう。
それはマリーの期待のきもちを
はなやかに
元気よく
勇気を出してためらわずどこまでも届けようとすること！
だと思うんだけど
たまに、ただのいたずらっ子だと思われて
もうちょっと落ち着いてちゃんとしなさいって怒られるの。
でもマリーは平気よ。
何を言われたって
自分が本当に求めていることを知っていて
そのためには
たぶん……
こんな方法もありじゃないかしら？
派手で華やかでちょっとおてんばな女の子に見えていても
これはみんなと幸せに過ごしたい気持ちを伝える
白鳥が水面の下で足を泳がせる努力の──
というか結局、楽しいからしているんだけど！
ごまめができたら味見の時は
フェルゼンがおいしいものを食べたうれしさで
もっとすてきな笑顔になれるように
マリーがあーんってしてあげる一工夫を加えるのがいいと思うの。
あんまりおいしそうでうれしそうで
きっとみんなもつられて食べたくなって
おせちはお正月前に完売よ！
困ってしまうわね？
