春風

『懊悩』
今の小学生の子供たちの間で
語られてる噂話の
その中身も──
私たちが同じくらい小さかった頃と
あまり変わらない。
今思えば、嘘か本当かわからない話も
まるで疑わないまま
怖がっていたものだけど、
この年になって──
落ち着いて聞いてみると──
ぜーんぜん
ちっとも
怖くなんてない──
ということは
あんまりないですね!
むしろ、大きくなってから
気持ちがわかるようなことも
あったりして。
そう──あの桜の下で
思い人を待っていた
切ない気持ち。
静かな美術室で
ずっと一緒に穏やかなままいられると思っていた時間を
奪われる恐ろしさ──
裏切られる約束──
う、ううっ。
人が人を思う気持ちというのは
いつの時代も変わらず
どんな時だってあまりに激しく
世界の全ての物理法則も越えて
何もかも変えて行ってしまう──
ふう。
それにしても、怖がっていると
おなかがすきますね!
そんなことない?
こう毎日毎日
ぞっとしたりびっくりしたり
涙を流したりしていたら
体がもたないですよね!
きっと、みんなもそうだと思うわ。
どこから何が飛び出して
まさか宇宙人にさらわれたりもして
何が起こるかわからないこの世の中、
もしも疲れてうつむいている間に
運命の王子様がとなりにいると
気がつかなったりしたら大変だわ!
ああ、この世はおそろしい──
せっかくのおてんばな子の気立てと健康が
わからないままになっていたら──春風がいけないんだわ。
力をつけないと──
私の王子様も
怖がっておなかをすかせりしていないかしら?
何かが襲いかかってくるその前に、
春風と一緒に過ごして力をつけておいてくださいね。