さくら

『なつのよる』
ぐすぐす
ぐっすん──
さくらが
ないてしまうよ。
あついひに
すずしくなる──
こわいおはなしを
みんなでしていたからなの。
とてもおそろしい──
こわいおはなし。
なんだか、おはなしを
きいただけで
そこにもここにも
あそこにも
おばけがいるようなきがしてきたの。
ひええ──
よのなかに、そんなに
おばけがいたら
こまってしまうよ──
まるでさくらのおうちが
いわくつきの
ばしょのよう──
もしかしたら
おうちができるまえに
おはかだったかもしれないし、
びょういんだったかもしれないし、
がっしゅくにきた
おんなのこが
じこでなくなったかもしれないし、
へいたいさんの
ひみつけんきゅうじょだったかもしれない──
あのろうかの
まがりかどのさきに
おばけがいるようなきがするから
そんなふうにおもってしまう。
うええーん。
でも!
おうちもいまは
さくらとみんなのおうちだもん。
お兄ちゃんもいるもん。
お兄ちゃん!
さくらがこわがって
おもらししそうになっているとき、
てをつないでいてくれる?
ずっとてを
はなさないでいてくれる?
ほんとう?
やくそくする?
もしも、お兄ちゃんが
てをはなしたら
さくらはいきていけない──
かも。
ううん!
お兄ちゃんはそんなことしないよ。
こわいはなし、どんとこい!
さくらには
なつもふゆも
あさもよるでも──
やさしいお兄ちゃんがいるんだもの。