春風

『あばれる春』
季節はすっかり暖かくなり
勇気を出して挑戦したいファッションの波が
これからたくさん春風を待っている。
王子様も期待していてくださいね!
寒さに耐えながら実用を求めながらというのもそれはありで
必要は思いがけない組み合わせを芸術にすることも、
なんて楽しい日々があって。
でもこれからは
春風を制限するものは何もない。
なくはないけど……まだちょっと寒いから気をつけるくらい。
肩に羽織る鼠色の重さを一枚分くらい脱ぎ捨ててもいいの。
カーテンみたいにゆっくり揺れるスカートの裾も
今日からは短くしたってかまわない。
春風が新しい春風を見つけたら……
そうなったら王子様は
少しときめいてしまうかもしれません。
ど、どうしよう。
心の準備ができていないのに
自然と体が動いてしまう……
夢はふくらんでとまらず
このままでは銀河よりも大きく春風のドキドキが育ってしまう。
胸の高鳴りを止める方法なんてなくて
嵐が吹いても隕石が落ちてきても乙女の恋にはかなわないんだわ。
ところがここに
春風の背伸びを阻むかのように
そう、春といえば。
春が近づいたらもちろんそこにあるのは──
膨らみだす胸のうちをあらわすかのような春一番
やっぱり今日も強い風が吹きました……
髪はぼさぼさ。
肌もうるおいを奪われ
そろそろ開放的な気分を見せようとしたふとももさえ
寒さにぷるぷる臆病にふるえ
とても愛しい人に見せられない!
言っても仕方ないことだけど
風っていやですね。
春風の勇気にいつもいたずらをしてくるの……
今はまだ気をつけたらいいのかな。
スカートはまだ早かったのだとしたら。
ううん、そんなことない!
暖かさに芽吹く気持ちに
早すぎることも遅すぎることもない。
ざわめく胸の中がそう言っています。
嵐に負けない!
というか
関係ない!
どんなに風が強くても
花が開く季節に春風がきれいになったら
王子様はちょっとくらいはうれしいと思ってくれるでしょう?
ついに柔らかく開きそうな辺りのつぼみに
まだ恋をかなえることを知らない春風でも
追い抜かれたくなんてない!
だっていつ
何かの拍子で王子様が守ってくれるみたいに
肩を抱いてくれるかわからないし──
こっちから行くチャンスが見つかるかもしれないし
そうなったら今までよりも
厚いコートがない分だけ近くに触れ合えることが
想像しただけで
夢のよう……
だから春風は叶えに行きます
その夢を!
王子様、突然の暴風は仕方がないので
少しでもお天気の良さそうな日に
春風と日差しの下を歩きませんか。
このごろはとっても気持ちがいいはずだと
もう知っているみたいに胸がうずいているんです。