綿雪

『ピーマン』
毎日をすくすく
良い子で元気に育つ
ちびっこたちの前にあらわれ
大きく立ちはだかる高い壁。
その名はピーマン。
うつくしい緑色をした
苦味の悪魔。
お買い物帰りの働き者を
おかえりなさいの歓声でお迎えした夕方。
荷物がいっぱい詰まった
お買い物袋をのぞきこんで
はこびます!
れいぞうこでいいの?
たべます!
こんやなの?
無邪気にはしゃぐ子供たちが
それを見つけたとたんに
さけぶ。
あわてる。
おろおろ……
お願いもはじめるの。
食べなきゃだめですか?
うるうるしながら。
ピーマンは
いらないと思うの!
でも、多数決をとっても
食べ物の栄養ばっかりは
どうにもならないもんね。
たまねぎや
にんじんは
甘みを生かす食べ方もおいしいの。
炒めたたまねぎの味付けに力を貸してもらいます、
深みのあるカレー、
五目チャーハン、
チキンライス。
たまねぎがなくても
おいしいんだもの!
苦手な子たちの主張を聞いて
二つ並べて作ってくれる春風お姉ちゃんと蛍お姉ちゃん。
すごいの!
リクエストを受け付けて
途中で迷ったりしない。
手を止めないで
はい、はい
わかりました!
注文の多いお子さんたちですね!
二種類も
さくさくっと作ってしまうの!
今すぐお嫁さんにもらわれても
全然困らないと思うの。
これから新しい家庭で
子供が何人増えたって。
お母さんが春風お姉ちゃんや蛍お姉ちゃんなら
へいき!
よゆう!
おまち!
おそまつさま!
いつでも明るくて元気。
えいよう
かんがえてます!
そのおかげかな?
なんだって。
わあ……
おねえさんって
大人なの。
ユキ
びっくりしちゃう。
おつかれさま!
肩叩いてあげる!
ユキができることはこれくらいしかないから。
にんじんの甘みは
シチューでとろけるの。
月曜からまた寒くなりそう!
それぞれの希望を集めたら
シチュー。
みずたき。
かもなんばん。
冬の寒さを吹き飛ばすメニューたちの
華やかな晴れ舞台が
まだまだ続きます!
何にしたらいいかなって、みんなで話す楽しみ。
だけど
それでも
ピーマンだけは
天才コックさんたちでも
もてあます。
吹雪ちゃんが調べたら
子供の味覚は、ピーマンの苦さを敏感に感じてしまうので
大きく育ったら
誰でもおいしく食べられるようになる、
と言うけれど。
緑だけじゃなくて
赤や黄色のピーマンも使うときれい。
栄養バランス的にも
主婦の味方、
なんだそうなのだけど。
もう、主婦になったの?
指輪の交換──
ひみつで
したんだ?
ちょっとどきどき。
それでもむずかしい
ピーマン。
食べてほしいのに
むずかしいな。
大人になっても
なやみます!
お口の中
にがにがしちゃう。
子供だって悩むの。
ピーマン入りと
ピーマン抜きの
炒め物。
さくらちゃんが
お兄ちゃん、ピーマン入ってなくてもおいしいでしょう?
おさじでどんどん運ぶので
お兄ちゃんのおなかが
ユキはなんだか心配です。
食べ過ぎて、苦しくなったら
ユキを呼んでもらえたら
えーと
えーと、
とにかく、小さなユキでも
何かお兄ちゃんのお役に立ちたいの!
ユキはピーマン苦手じゃないよ。
さくらちゃんには
食べてもらいがいがないかもしれないけど
お兄ちゃんが呼んだら
ユキがそわそわしながら
ときどきは、お手伝いに来るよ。
頼りにしてももらえるかなあ……
できること
少しだけでもいいですか?
栄養があるなら
いいと思うんです。
おなかがいっぱいの時は
お兄ちゃんのおそばに
もうひとつだけ
ちいさないぶくろ。
ユキも食べるの手伝ってあげる!