『私のお姉ちゃん』
春風ちゃんは蛍の優しいお姉ちゃん。
ちょっと早く生まれたお姉ちゃんで
ものしりでかわいくて
蛍の知りたいことをぜんぶ知っている。
それをみんな教えてくれたりもするよ。
キッチンに並んで立つと
お料理の話もできるし
お菓子も一緒に作れるの。
蛍が小さい子にしてあげているみたいに
頭を撫でてくれたり
一緒に喜んでくれたりする。
いちばん趣味の合うお姉ちゃん。
四人もかっこいいお姉ちゃんがいる蛍には
大好きなことをいっぱいお話できて
つい甘えちゃう……
たった一人のお姉ちゃん。
その春風ちゃんが
最近なんだか変なんです。
もちろんバレンタインのこと。
その日のために練習を積み重ね──
お買い物に行くたび目をぎらぎら輝かせて
お兄ちゃんに喜んでもらえるものがないか探している。
家に帰れば恋する乙女の揺れる瞳で
ずっとお兄ちゃんを見つめて
そして一人になるとうつむいて考え込んでしまうの。
とてもお兄ちゃんのことが好きなんですね。
バレンタインなんて特別な日があったら
もうお兄ちゃんを世界でたった一人の最高の幸せ者にすることしか
考えられないみたいなの。
そんなにお兄ちゃんのことを思えるなんてすごいな……
お兄ちゃんを好きでいられて
きっと春風ちゃんはすごく幸せになったんだなと思います。
女の子として生まれて
こんなにも熱く燃え上がるように人を愛せるなんて。
望んでも望んでも決して──それは誰もが得られる気持ちではありません。
ちょっとくらい調子が合わなくなってしまっても
そういう時もあるに違いないの!
本当は蛍が張り切って
春風ちゃんに優しく見守ってもらうことが多いのに……
ホタ──もう──
チョコレートの計画ができちゃった。
ぜったいお兄ちゃんは
おどろくぞー!
なーんて今からわくわくしてしまうんです。
まだ計画の細部の見直しはあるかもしれないけど
とりあえずあんまり迷ってはいないみたい。
基本的に──
大きかったり量が盛りだくさんだったらいいような気がしてしまう蛍は
たぶんまだ子供なのかもしれないですね。
でも、春風ちゃんを助けることもできないほどには
もう子供ではないと思いたいんです。
腕まくりをする黄金の右が
今年は自分の故意のためだけではない活躍をしたら
お兄ちゃんにお話できる楽しいことがもっと増えるかも?
蛍は憧れていたように優しく見守るお姉ちゃんになれるでしょうか。
お兄ちゃんにいい報告を届けられるよう
うきうきしながら張り切っていきます!