『無邪気な絆』
旅から帰ってきた私たちを
待っていたのは
重たい灰色の空と
冬本番の寒さ。
たまった洗濯物が乾かない
冷たい風、
それからお手伝いをしたくて
かわるがわるやってきては
洗濯物の引っ張り合いをして泣いてしまう
小さくて元気な子供たちです。
寒い寒いときには
こんなにかわいい姿があると
ほっとして
心が温まりますよね。
あっ……
だじゃれではなくて。
たいへん、蛍までがなんだか寒いことを言い出しました。
まあそれはともかく
お兄ちゃんも疲れましたよね。
よく眠れた?
いきなり入った予定で休日を埋めることになっての強行軍。
帰ってきてすぐの学校もあるし
蛍も何かお兄ちゃんをねぎらうことができればいいんだけど
癒しを差し上げたいなって考えても
どうすればいいのかというのはかいもく……
とりあえず蛍のコーヒーをどうぞ。
胃も疲れてしまって強いコーヒーもちょっとというなら
体に優しいお湯わりのカルピス、フルーツジュース、
それからレモンのいい香りがする少しのホットワインなども
作れるようになりました。
寒い冬は蛍の近くで温まっていってくださいね。
気分も乗ってくると頼まれてもいないのにサンドイッチなども出てきます。
それが蛍の周り。
ところで、お兄ちゃんも聞いた?
海晴お姉ちゃんが預かっているみんなの報酬のお話。
お年玉はまた別に用意するとのことで
みんながそれぞれ物入りな時期といっても
あまりお金を持たせるのは子供の金銭感覚を養う面でよくないそうです。
私たちの海晴お姉ちゃんはとてもよく考えてくれているの。
蛍がそんなにお金をもらったら困ってしまうこともよく知っている。
おこづかいはやりくりしてやっていくのが楽しいんだと
帳簿と向き合う時間を大切にしている蛍が
ある日突然
クリスマスケーキのチョコレートを増やしてもいいよ、
なんだったらもうひとつふたつ作ってもいいよ
なんて誘惑にふらふらしてしまったら
そうなったら蛍は……
そんなことになった経験がないのでどうなるのかわかりませんが
せっかくこれだと決めたのに
また迷ってしまう。
そうなの。
実は早くもどんなケーキを作るのかは決めてあるんです。
ホタが一目ぼれしたケーキ──
楽しみにしていてください!
海晴お姉ちゃんは、みんなにお仕事の大変さを学んでもらって
お金の大切さをよくわかってもらえたらと
考えているみたいなの。
できれば一人一人が貯金などをして
この先困ったときのためにも残しておいて欲しい──
それには今回のお手伝いは
みんなとってもがんばってくれて
そばで見ていると幸せな気分になるというお得な体験なのでしたが
本当に働くことを学んだとはまだ言えないのかもしれない。
大切なのはどんなことなのか
それぞれが自分自身の答えを探していこうとしなければ──
海晴お姉ちゃんも受け売りだって言っていたけど
すてきなことを教えてくれる人がいる
いいお仕事をしているんだと思います。
春風ちゃんが何か思いついたみたいで
明日には教えてくれるそう。
蛍はみんなが難しいことを考えて頭脳労働に励んでいるのを
お手伝いするのが難しいので
なにか差し入れでも用意したい考えです。
そのメニューでちょっと悩む……
今は一番頭を使うのはそれくらい。
いつかはたして──お姉ちゃんたちのように蛍はかしこくなれるのか。
ひとつ下の氷柱ちゃんにさえとっくに追い抜かれているのではないか。
うーむ──
まあいいか、それは悩んでも仕方ないことです!
蛍はまだ──先に何が待っているのかわからない子供のまま。
泣いても笑ってもはずかしくても
それが今の蛍だと思うんです。
お兄ちゃんからもそんなふうに見えるかなあ?