春風

『メガトンパンチ』
私のたくましい王子様に
こんなことを聞くのは変かもしれないけど……
怒らないでくださいね。
ほら、王子様といっても
春風の目から見たらまぶしく輝いていても
でもその体は
私たちと同じ人間ですから。
よく食べてもらって、よく休んでもらって
冬の厳しい寒さを乗り越える体を守ってもらうのは私と同じ。
眠るときにおそばにいさせてもらうことは
今はまだできないの。
そこで、春風のできることはお料理になります。
あの……
やっぱり王子様も
子供の頃は好き嫌いがあったのかしら……
なんて。
今も特別好きな食べ物とかあったりするのかな……
春風、王子さまの一番好きなものを
作ってみてもかまわないでしょうか。
あの、勇気を出して
単刀直入に言ってしまうと!
これを上手においしく作れる女の子がいたら
たちまちその場で恋に落ちてしまうに違いない、
テーブル越しに伸ばした手で私を捕まえて
そのまま胸の中へ──
となるようなメニューなんてあるでしょうか。
や、やっぱりないかなあ?
そ、そうですよね。
ちょっと都合が良すぎる想像かもしれない……
あの、でもたとえば──
仮に、もしも、たとえばの話で
どんなお料理も置いてありますという
ファミレスのもっとゴージャスですごいお店があるとしたら
王子様は何を注文しますか?
お気に召していただけるようなんでもする子がいて
春風はあなたには何も遠慮してもらいたくない、
むしろ春風の好きにしたら
いつまでも時間をかけてしまって
結局何も差し上げられなくなりそうな気もしてきたという
そんな時!
あなたの手助けが必要なんです。
あなたの心に届いて
いちばん喜んでもらえるおいしいものってなんだろうと
もう春風はぐるぐるして堂々巡りが止まらない──
でも、王子様に迷惑をかけてしまうのもいけないとわかっているの。
いっそのこと──
バレンタインの日が
永久に続くのなら──
春風はいつまでも腕を磨いてあなたに尽くすのに。
今から手に手を取って二人で駆け落ちをしたら叶うでしょうか!
春風は考えすぎてなんだかよくわからなくなってきたような気もしています──