立夏

『こなごな!』
だーいすきなものには
きれいな飾りをつけようとするのが
子供の頃からのリッカのとくちょう。
ノートの名前は
カラフルに書かないとはじまらないし──
スニーカーに通す紐も色がついたのに変える!
お絵描き帳は中身を見れば一目で分かるくらいで
色えんぴつも全部なくなるのはリッカがいちばん早いもんね!
うっかりなくすのもあるからだけど……
なくしたせいで泣いてしまっても色のついた涙がこぼれるかも。
指先まで色でいっぱいだもんね。
ところで今のリッカのいちばん好きなもの
なんだろ?
それは、オニーチャン!
いつも遊んでくれるオニーチャン。
あばれるリッカとその優しいオニーチャン。
しあわせ!
でもでもなんでか
子供の頃から思い出してもぜったい何より一番の
好きになったものは
リッカが好きにカラフルにしたらいけないの……
なんでさ!?
夢中になって行動をはじめたら
おなかがすいても眠くても途中で投げ出さないという
数少ない自慢の種が
ここでは禁止。
だって本当に本気で好きになったのが
画用紙でも新しい靴でもなかったんだから
しかたないよね。
じゃ、そういうことで
きれいに色をつけて飾るのは
バレンタインのチョコレートにしておいてあげる。
リボンもけっこうあるよ。
高級感のある手触りのサテンも
ポップなキラキラ模様も取り揃えているわけは
蛍ちゃんに頼んでお裁縫で余ったのをもらってるおかげ!
このままリボン探しの才能を磨いて
世界中のリボンが集まれば
天使家のリボン長者くらいは名乗れるかもしれない。
でもいよいよこのかわいい子たちの出番が来て
今を逃したら後悔しそう!
だと思ったから
リッカ、とびはねて箱を開いて
世界中から集めた気分の全部のリボンから
いちばん好きな人への贈り物に何よりもふさわしいのを選ぶ!
幼いはなたれリッカが今日のお年頃になるまで鍛えぬいた才能──
今この瞬間に発揮しないではどうする、という場面が
ついにリッカにも訪れた。
人生の一大事──
おおげさかもしれないけど
おおげさじゃない!
さあ行くよ!
はこ
どばーっ!
おおっ!?
意外とためこんでたね。
えらいぞ、リッカ!
けっこうあったから
ずいぶん雪崩をうって広がっていったヨ。
あれ……もしかしてこれって大惨事?
や……
やっばーい!
オニーチャーン!
たっすけてぇー!