氷柱

『エイプリルフール』
いつも優しくて
頼りになる──
それは、
女の子ばかりの私たちの家に
突然あらわれた不思議な人──
慣れない場所で大変だろうと思っていたら
いつのまにかもう
私たちのほうが助けられることばかり。
困らせてばかり──
甘えてばかり。
しかたのないものだわ──
と、みんながそう言ってるという話よ。
だから
こんなことじゃいけない、
ちょっとはこっちのほうがしっかりしなくちゃって
思っても──
いつも気の抜ける顔をして
気を張ってるのがばからしくなっちゃって
まったく。
私たちのほうで見栄を張って、満足に怒らせることさえ
なかなかさせてくれない。
そう言ってる子もいるわ──
なんだか変わった人。
あんまりどこにでもいるようではない
私たちの家族──
だからあなたには、
私たちと過ごすあなたには
ちょっとだけ幸せになってほしい。
別に、世界で一番なんて現実的でないことは言わないから
できれば──なるべくなら。
どちらかといえば。
騒がしい女の子たちに囲まれて
少し頼りにされているあなたなら、
きっといいことがあってもかまわないはずで──
私たちもそうだったらいいなと望んでいる。
理想通りになることなんてなかなかない世界の中で
たまには願いが叶って
あなたがうれしくなるようなことだったら
もう少し増えてもいいんじゃないのと──
そう思っている人もいる。
できれば──
これからも一緒に
そういう未来を見ていけたらなと思っている子もいる。
毎日大騒ぎで、
いそがしくて──
寂しがってる暇もないのがいいところだと言ってしまうような
この家で──
あなたと過ごしていけたらな。
春が来て、たまには景色を見ながら散歩もして
私の隣にはこれからも
ずっといつまでも
ひょっこり突然やって来たとは思えないほど馴染んでしまった
私の家族がいるんだなと──
そんなことを、暖かくなった日々に考えている。
特に何かが始まるというわけでもない
ただの区切りの新年度の日に、考えていると
そういう子もいるのかもしれないわね。
という話。
まだまだ朝晩は寒い日が続くから
あなたみたいなのんきな人は、油断してすぐ風邪なんか引いてしまうに決まってる。
ずっと私が付いていないと、いけないんだから──
だからこれからも気の抜けた顔でもしていたらいいわ。
春の陽気にはきっとよく似合うことでしょうね──ふふん。