アクアリウム
生まれたてのあさひの
まだ幼い夏の光が
広い海も街も照らす頃。
大磯駅から旅ははじまり
熱海駅で乗り換え
そのままJR東海道線を進んで三島駅へ到着したら
伊豆箱根鉄道長岡線を伊豆長岡駅へ。
そこからバスは出発し
まもなく目的地の三津シーパラダイスでございます。
東海道線沼津駅へ行ってそこからバスに乗る経路もあるけれど
この場合はバスの移動時間が長くなるから
今回は電車が頼りという形になったわね。
というわけで今日みんなでおでかけしたのは
私たちのこの夏いちばんの興奮の場所。
三津シーパラダイスは歴史ある水族館で
イルカやセイウチの飼育なども昔から行っており
日本で初めてイルカのジャンプを発表したという経緯もあって
まあそれも、つい最近調べて初めて知ったことなんだけど
そのため、施設自体は最近の大きな水族館などと比べると
やや控えめで時代を感じるところもあるかもしれないけれど
イルカやアシカたちのショーは
やはりどこの水族館よりも一日の長があるという感じかしら。
7月に改装してリニューアルオープンした際に誕生した新しい施設もあり
子供たちにとっては触れ合える広場もいいのかもしれないけれど
やはりこういうところに来るからには
一番のメインイベントを楽しまなくては、と思うのは自然なこと。
愛らしいしぐさのペンギンや
並んで気持ち良さそうに泳ぐ魚たち、
普段は触れることのできない神秘をひととき目の当たりにできるのも
確かに水族館の魅力。
でも華があるといえば
頭が良くて体が大きくて
やさしそうでときどき激しくて
水を切って泳ぐ流線型のボディーも美しい
人間たちの友達という感じがする
元気なイルカたち。
私は本当はそんなに
喜ぶのが当たり前のものだから追いかけるというほうでもないし
自分の趣味が普通じゃないらしいことに気がついても
なんにも気にしない。
好きだから好き! って言ってることを
からかって笑うほうがおかしいの。
だから──
すいぞくかん?
また蛍姉さまのブレーキのない趣味が周りを巻き込みそうだなあ、
いいけど……
私たちはお魚になるのかしら?
これは少しの忍耐が必要ね。
なんて考えることもあったし
まあ、子供みたいに近くにいたあなたの手をとって
こんなにそばで並んで泳ぐ
お魚になってみたいですね、なんてはしゃいでいたのは確かで
泳ぎが苦手なのに夢は大きいのね、とか
実際には出かける前に
なぜか長い旅を案内するバスガイド風のコスプレに近い格好を
いったい旅先でどこから用意したのか急に予想外のおめかしをさせられたことなどは
いったんおいておくの。
水族館はいつ、どんな時代も人気のスポットみたいで
いつでも子供たちや、ロマンを忘れかけた大人たちの味方かもしれないけど
子供たちのほうも考え方がそれぞれで
誰でも好みが同じということはないし
それにそもそも
私はもう子供じゃない、と思うから──
大きなイルカが泳いで飛び跳ねるくらいで興奮したりは
しないほうなの。
本当はそう。
いいじゃない。
行ってみたら、意外と良いところがあったなって感想くらい。
海のそばで見つけた景色が今まで思っていたのとは
ずいぶん別の輝きで
きらきらしていたとか
広い世の中、少しくらいひねくれている子でも
そんな感想にさせる場所だってたまにはあるかもしれないんだから。
明日は一日自由行動。
基本的には、明後日の帰宅の準備でホテルの中で過ごすことになると思う。
だけど時間が空いたら、何度も通った道を散歩して
もうすぐ終わる大変だった旅行の話でもしながら
潮風に思うことがあっても
かまわない気がするな。