真璃

『懐かしい調べ』
たまらなく恋しいのは
ママが生まれ育った
わがやの心のふるさと、
あの海辺の街。
いつもママがいた場所の記憶が
私たちの中にも受け継がれているかのように
教えてくれた──
あの街で過ごした子供時代のお話が
目に見えるように浮かんでくるわ。
丘の上から近づく船の汽笛が聞こえる土地で
遠い空にかもめが飛び
吐く息も白い冬が来て
ジングルベルの鈴の音が聞こえ出すと
その瞬間まで海で泳ぎっぱなしだったママが
濡れながら砂浜に上がってきて
プールでもうひと泳ぎしたあと
ホテルのスパの温水プールに突入し
勢いで大磯がコースになる国際マラソンにも参加して
広い海を見渡す温泉でゆっくり汗を流した後
街を愛するクリスマスバザーを盛り上げるのが
毎年の12月の過ごし方。
って、ちょっと待って。
いくら海辺でも
最近の話にしては船の構造がどうもレトロだし
冬まで泳ぐのは元気がよすぎるし
おじさまのホテルにスパができたのは確か去年くらいの話で
まだ真新しいきれいな温水プールに招待してくれたのを覚えているし
国際マラソンは明日が第13回だからママが参加していたにしては
ほんのちょっぴり計算が合わないようだし
クリスマスバザーもそれに合わせたお客を呼び込もうと
このあいだ始まったばかりと聞くし──
大人って話が適当な気がするのよね。
そういうところよくないと思う。
マリーは話が正確な大人になりたいわ!
というわけで
すごい規模で行われるマラソンの大会を見るため、
じゃなくて
地域のイベントのお手伝いのため
ママのふるさとを盛り上げるため、
元気をもてあましすぎる
よい子たちの活躍の場所を探すため、
マリーたちはこのあと
海辺の街──ママの愛する大磯で週末を過ごします。
みんなで一丸となって
大変なお仕事だけどがんばりましょうね!
明日の朝の電車は早いわよ。
フェルゼンもマリーのキスで起こされるのを待っていたら
置いていかれるかもしれないわ。
ちょっと残念だけどそれは
立派にお仕事を終えて
帰ってからのごほうびにしましょうね。
それとマラソンに興味があるヒカルお姉ちゃまや立夏お姉ちゃまたちに
ちゃんと手綱をつけておくのを忘れないようにしないと!