夕凪

『春休みの変身』
夕凪はねえ!
お姉ちゃんたちのお料理を手伝って
作り方を覚えようとして
じーっと近くで見て
おじゃまをしていたよ!
本当は自分で作れるようになりたいんだけど
簡単なお手伝いだけでもうまくいかないし
まだ小さいからなあ──
でも、本当にできるかどうかはわからなくても
覚えておかないと、
それか、ちょっと覚えてみようかなと思って観察しておかないと
いつか挑戦したくなった時に困るじゃない?
覚えたかどうかもまだわからないというお話だよ──
たぶん大きくなって
かっこいいお姉さんになり
夕凪のお姉ちゃんたちみたいに
なんでも器用にこなせるようになったら
今日の経験が役に立つはず。
一年後か──
もう少し先か。
そんな感じの春休みの一日でした。
あれ、待てよ──
なんだか前に、確か、あれがあったはずなんだよね。
一年前の春休み──それとももっと前。
観月ちゃんといろんなお話をして
春にあらわれるもの
消えるもの──
桜や梅の妖精が育ち
ついでに、大人になる妖怪だとか
そういう言い伝えなんかをいろいろ聞いたの。
吹雪ちゃんにも聞いてみて
実際にありそうかどうかを
教えてもらい──
一緒に考えた大人になるマホウが
作りかけでどこかにしまってあったはず。
そうだ!
夕凪はあの時と比べたら
大きくなったじゃない?
かしこくなった──可能性も否定できないはず──
今なら、あのマホウを完成させて
明日のごはんに間に合わせることだって
できるかもしれない。
大きくなって美人に変わり
桜か梅か桃の花か──
きれいなその子が
お兄ちゃんや家族のみんなのために子供のころからがんばった
お手伝いのおかげでついに
おいしそうなお料理と
あたたかな食卓を用意できるとしたら。
いろんなことが少し変わってゆく
おだやかでやさしい春休みには
夕凪が不思議なマホウを完成させるくらい──ぜんぜんありえるに違いない。
どこにしまったっけ?
それとも──片付けができないようではまだまだなのだろうか?
いやいや、まだわからないぞ!
春を迎えるためにゆっくり続けてきた
お部屋の片付けが上手にできていたら、何かが変わっているかもしれないぞ──