夕凪

『時間が足りない!』
なぜ?
春になって
外で遊んでいられる時間が増えた。
あんまりいろいろ外出もできないし
ふだんはお庭、
たまに公園に行くくらいで
できることは
そんなにないはずなのに──
今日も遊び足りない。
きのうも遊び足りない。
きっと明日も──
赤く染まり始めた山の端を
さみしく見つめる
夕凪の視線!
まだまだ
もっと
走り回っていたいのに──
なにしろ今日は
冬の間に庭の隅に寄せた
あの真っ黒な
枯れ木を集めるお手伝いをしているうちに
いい形の枝を見つけたんだもの。
長すぎず短すぎず
ちょうどいい。
太さも
手に持った時に吸い付くようにぴったり。
こんなにすてきな
マホウの杖があったら
なんでもできるはずなのに──
夕方が来るのは止められない。
そうかもしれないとは
思っていたけど
やっぱりだった。
でも、もしかしてと
今回ばかりはと
そんな気もちょっぴりしていたのに!
夕凪の本当のマホウの杖はどこに──
いつになったら見つかるのか?
大きくなって
頭が良く何でもできるようになるほうが
先じゃない?
明日も枝拾いだよ!
一休みの時間には
お姉ちゃんたちのおにぎりも食べて──
夕凪はまだまだ
まだまだまだ
春の夕暮れにはしたいことがいっぱい。
こんなに楽しい春の時間が
夕凪が遊びつくすまで
いつまでも続けばいいのに──