星花

『風の強い日』
春めいてきた
まぶしい日差しに、
おそるおそる玄関を出て
様子を見に行った子たちが
みんな──
ぼさぼさの髪で帰って来る!
こんな日は家の中で過ごすに限るというものです!
そもそも、何かと忙しくなりがちな
春を迎える私たち──
あと少しの今の学年の日々に、
もうすぐやって来る新生活に
今のうちにやっておきたいことは
たくさんある!
とりあえずは部屋の掃除と片付けで
いるものといらないものを分けるところから
はじめるのだけど──
やっぱり、こういうのは
得意なことそうでもない子がいるのは
仕方ないですよね。
あんまりはかどらないと
途中で飽きちゃうのはわかるし──
ごほうびで釣るというのは
どうだろうか?
そう誰かが考えます。
おやつとか──
あとで遊んであげる約束とか──
もしがんばったら
おでかけにだって連れて行ってもらえるかもしれない!
とりあえず、それで進むのは
ごほうびが有効な間だけの
短い時間──
だけど、順番に片付けていかなくては
なかなかどうにも
後で大変なことになりそうな
春の日のたくさんの用事。
簡単でなくても
進んだ気がしなくても
前を向いて
ゆっくり一歩一歩、
それしかできることはないのです。
星花がちょっとだけがんばっていると
あきらめていた子も
しだいにつられてまた春の準備に
とりかかるかもしれないし、
別にそんなこともないかもしれない。
風の強い日は
みんながおうちの中にいて
お片付けが性に合っている子と
日当たりのいい窓のそばでごろごろする子と──
外に出られない分、おうちでいろんな光景が広がるのです。
ふー。
さっきまでがんばっていた子が一休みで
日なたに読んでもらったりして──
私たち家族も一歩一歩、
進んでいるようなまだそれほどでもない足踏みかもしれないような
まだ寒い──だんだんとあたたかくなるのを待つ日を過ごしているのです。