『道は続く』
新年度の始まりの日ね。
大学生の海晴姉さまから
ピッカピカの一年生のユキちゃんたちまで
新しい一歩を踏み出す日。
先週あたりから始まる学校も
たくさんあったみたいだけど
私たちにとっては今日が
新生活に向き合う
記念すべき特別な日ということになるわね。
今日も春らしいお天気で
朝のうちはまあよく晴れてよかったわねと
早起きの目をこする子の背中を押し出す声が
陽気にもほどがあるくらいだったのに
昼前くらいからいつものように風は強くなり
花びらはせっかくきれいにした制服にくっつくし
吹き飛んでくる砂はうっとおしい。
スカートを気にする生徒たちが
桜の舞う通学路を
ぼさぼさの髪で通り抜けて
景色がそれなりにきれいだと言っていいところ以外は
まったく始まりの日にふさわしいのかどうかわからない
試練の押し寄せる新年度の一日目ね。
まあ冬の間に比べたらまだ気候はいいほうだとは言えるかも
しれないから──
ぜいたくばっかり言っていたらきりがないし
これくらいが良くも悪くもないということで
妥協することにしてあげてもいいわ。
朝からすっかりはじまり続きで
クラス分けの発表、
席決めのくじびき、
クラブ活動の説明と
カバンで存在感を主張する新しい教科書たちとの出会い。
ちょっと短い時間に
詰め込みすぎで
みんな疲れないの?
こういうものかしら?
どきどきすることばっかりで
気がついたときにはおなかがすいていた自分に機がつくから
ホタ姉さまたちは晩ごはんも腕によりをかけて用意しておくつもりで
そんなごほうびが待っているから
全力で新しい一日を楽しんできなさいと
朝から家族の合言葉みたいに言われ続けたっけ──
盛りだくさんの一日を終えて帰ってきた私たちに
家にいる間はごろごろ全力で休んでもいいと主張する権利はあると思うわ。
桜の花びらがちらちらと星を散らす
夜空の色の制服も嫌いではないけれど
お気に入りのカップに抹茶ミルクの湯気が揺れるのを見るのも
はじまりの一日に
ふさわしい景色だと思うの。
どうかしら?