『プロバビリティーの犯罪』
先に言っておくと、
もしかしたらそういうことも
あるかもしれないと思うだけで──
答えが出ない話になるわよ。
たぶん。
ホタ姉さまにしてはうっかりというのか、
それともたまにあるのが
ホタ姉さまと暮らす私たちの日常なのか、
荷物を抱えて、線路沿いの長い道を
ふらふら
いざなわれた──
寄り道によって、
ホタ姉さまは足が棒のようになり
筋肉痛に悩まされたという。
もしも、ママが偶然車で通りがかって
拾ってくれなかったら、
困ってしまったわね?
秋の風景が
まるで強い意志のある
妖鬼のように導いたのが
原因なのかもしれないので、
心を奪われる美しさにも
油断はできないという
教訓の話なのか──
しっかりしていて
冒険もそんなにしないお姉さんだって
人間らしい面がある微笑ましさなのか──
それに、気付いている?
何かが呼んだ怪談か
因縁話なのだとしたら──
どうして、ひとつだけ
あまりに都合がよくて
平和的に──
ママに出会えて帰ってこられたというのだろう?
理由はなく
意味ありげなのも気のせいで、
全てがただの偶然である可能性が
高いのは確かだけれど──
ホタ姉さまやママが
目を和ませる眺めを見つけたのは
全てが論理的であり
機械の歯車がかみ合うように
説明できるとしたら──
あるいは
地元を紹介するテレビ番組で
かわいらしい二両編成のローカル線が通り過ぎる場面を
好んで何度も見ていた人がいたとしたら、
もしもおつかいに出て
寄り道をする時間を見込んで──
どの通りを進んで
どこの道を曲がるのか、
そうしたらどんな景色がありそうか
何かを期待して伝えていた人がいたとしたら。
あんまり──自分の好みでわがままばかり言うと、
子供だからって
あとで困ることもあるのよ。
証拠は何も残っていないけれど、
これは答えが出ない話かもしれないと
先に言っておいたから、
そう。
これで終わりよ。