氷柱

『運命のうさぎガール』
べつに!
さくらの腕立て伏せができて
一番喜んでいるように見えるのが
私だなんて──
ただのうわさ話で
本当のことじゃないと思うから!
勘違いしないでよね!
それはまあ、小さな家族の成長を
喜ぶのは当たり前だし──
大はしゃぎしているようでも
不思議じゃないと思うわ。
でもね。
まさか私が
人前で──
気持ちを全部さらけ出して
何もかもばればれだなんて
うかつなことをするはずがないって
よくできた下僕なら
そのくらいのことはよく知っているわよね?
こほん。
というわけで
つまらない脇道はこのくらいにしておいて──
いよいよまた
さくらちゃんに──
これから本当の
試練の時がやって来るわ。
体を鍛え、
みんなとよく運動して
いっぱい遊んだ後の
鍛えぬいたさくらは──
今日、お月見のおだんごを
みんなのところに運んでくるというわ。
しかもホタ姉様は
うさぎの格好までさせるという──
さくらちゃんの努力を
私はよく知っている。
それでも──
いつでも、うまくいくなんて
どれだけがんばったって
誰も約束してくれないんだから
もしかすると──
こんな時に限って──
だから、もしうまくいったら
少しくらい喜んでしまうのだって
普通だと思うわ。
誰にでもあるわ。
よくできた下僕なら見て見ぬふりくらいできるわよね?
そうなるといいけど──
え?
着替え?
なんのこと?
ホタ姉様が──全員分?
あなたも?
よくわからないわ。
何にも聞いていないんだけど。
いや──聞いた気はするかもしれないわ。
とにかく、私はそんなことは知らない。
知らないったら知らない!
ふーんだ!