氷柱

『作戦会議』
やっぱりね──
そうなるかもしれないと
予想はしていたわ。
霙姉様が朝はすっきりと
眠そうな顔をしていないのに、
春風姉様の方はあくびをしている。
深夜を過ごす誘惑とは
それほどまでに激しく、
逃れることはできない。
誰かを開放する代わりに
また別の誰かを犠牲にする──
そんな話が昔あった気がするわね。
この呪いから
解き放たれるには
指輪が鍛えられた
はるか遠くの火山へと旅をするしかない!
というのは、おいといて。
だんだん夕暮れの時間も遅れだして
もう家の中に帰る頃なのに
まだまだ外は明るいな、
日が暮れた感じがしないな、と──
そんな感覚はよくあるわね。
もうちょっと遊んでいてもいいんじゃないか、
良い子の約束した
おやすみの時間だって
そんなに早くやってこないのではないかと
錯覚してしまう──
春風姉様も季節の変わり目に
捕らわれそうになっている。
このまま古い季節に
とどめておくわけにはいかないわ!
そういうわけで今夜は
私が春風姉様についていてあげて、
睡眠前の心地よいマッサージや
暖かいミルクなども用意しつつ
体調に合った
正しい睡眠時間へと
導いてあげなくてはいけない。
ずっと遊んでいたくてしかたない姉妹を相手に
私が蓄積してきた知識が
負けるわけがない!
まかせておいて。
え?
こういうフラグの立て方は
良くないって?
……私も少しあやしい気がしてきたけど、
そんなことを言っていたら何もできないものね!
下僕も眠れないことがあったら
まず知恵者に相談してみるといいんじゃないかしら?
春風姉様の身を無事に取り返したら
そのあとにでも
作戦成功の祝勝会に
下僕のことを少しくらい、かまってあげてもいいのよ。
期待して待っていて
いいからね。