『お山の秘密』
神秘的な場所があるのは
見知らぬ曲がり角の先や、
押し入れの暗がりの奥に限らず、
いつも見慣れた──
あの、夕日が星空に帰っていく先の
裏山のほうにも
見つかると聞く──
ママの言うことだから
どこまで本当かわからないが、
昔はあの山の土地に線路が引かれる計画も
あったようだし──
踏み入る者を拒絶するように、
あるいは生まれて消える騒動を楽しみ続けていられるように、
そういった計画の全てが
決まって消えて行った不思議な山でもあるとか──
本当のことはわからない。
私たちにとっては
子供の頃からある身近な場所だし、
山の神様や化けることを覚えた狐狸や
不思議な存在がいたとしても
あまり気にならないが──
でも、小さな妹たちが
学校から友達から、
あるいはどこから生まれたのかさえ分からない
奇妙な噂話の数々を興奮しながら持ち帰って来るとき、
思い出す場合がある。
すぐ近くに私たちに寄り添うあの山でさえ、
得体のしれない何かを隠しているのかもしれないと──
うかつに入り込むと
迷子になってしまうこともあるし──
やはり、何かあるに違いない!
でもお山のお堂を見つけたり
あの山に何かはっきりしたものを
感じているらしいのが──
うちの大家族でも、観月ただ一人のように見えるのは
私たちがどうも頼りないのか
観月が大したものなのか──
いつか、迷子にならなくて済むような
知られざる秘密を見つけてくれるかもしれないな。
それにしても観月はいったいどうやって
あんなに不思議に触れる力を身に着けたのだろう?
人から教わったとしたら誰から──?
うーん──
まあ、わからないことは考えても仕方ないか!
今日もお山には大きな日が沈んでいく──
雨が降り出しそうな曇り空ではあまりよく見えなかったけど、
秘密や不思議におどろいたり怖がったりする毎日を
元気にすくすく育つ子供たちのために、
明日は──晴れてくれたら
みんなが外でも遊べていいのにな!