観月

『やがて永遠に』
なーに、
お山にいるのは
何も恐れるようなものではない。
わらわがきちんと礼儀正しく
接していれば──
怖いこともしないし、
人を捕まえて食べたりもしないぞ!
古い古い昔から
住みついていたものも、
後からやってきたものも、
一度離れていたのに
このごろ住み心地がよさそうだと
戻ってきたものも、
みんな本当はやさしいのじゃ。
お酒で陽気になったり、
迷い込んだ子供の世話を焼いて
元の場所へ戻してやったり──
困ったことを相談したら
答えを出したりもしてくれるぞ。
ただ、ちょっと
力が強かったり──
いたずらが好きだったり──
怒らせると大変だったりするのだが、
どこのお山もだいたいそうなっている。
こちらから手を出してやりすぎなければ──
ぜんぜん悪いこともない相手たちだぞ!
昔からお山のように、
異界として区切りのある場所は
人間の行動が及ばないのが
当たり前のこと。
誰も──
そこでは並大抵のことでは生きておられぬ。
荒々しい草叢に、
細い枝の上に、
ときどきは──
人が作った道の分かれ目にまで抜け目なく、
あのものたちは棲み処を伸ばす。
そういうものじゃ。
人は現世に栄えるが──
加護の届かない暗闇で
守られるように定められてはいない。
力を持つもつのふところへ
不用意に踏み入ると
どうなるか──
ふふ。
兄じゃも、ちゃんと勉強しておくのだぞ。
今年もたのしい
ハロウィンのおまつりが近い──
人は、何も恐れる必要はない。
こちらが仲良くしようとして
ついでに、あちらのいたずら心が行き過ぎなければ
ただそれで──
少なくとも、頭を下げれば命だけは見逃してくれるはずじゃ。
今年も──にぎやかなおまつりになると良いな!