観月

紅葉狩り
お山のほうもだいぶ色づいてきた。
かえでの葉がひらひらと揺れるすそ模様。
小さい子たちはきれいな眺めを求めたり
落ちている葉を集めて走り、
姉じゃたちは走り回る子供たちから目を離すわけにはいかないので
いっしょうけんめいに追いかける。
やがてつかまった子供たちは
お気に入りの暖かい腕で大人しく見上げる──
秋の優しい日差しの中のできごと。
ついきのうまでずっと青々としていたような気がする
若々しい木々の景色は
気がつかないうちについに目を奪う鮮やかさまで変わっていた。
このあとしばらくはきれいに着飾る
かわいらしいお山を見ていられるな。
まりつきをして
一休みをして、
兄じゃ、今日もお山がかわいらしいな、と伝えるのじゃ。
明日もきっときれいであろうな、
またこうしてわらわが忘れていた頃にびっくりするのを
聞いてもらおう!
と、約束するのじゃ。
昔から収穫の時期は
おいしいものと
よい眺め。
人々の心を動かすものは
千年も変わらずにあるという。
いつの世も手をつないでお出かけをする彩の道。
こんなにいいものなら
一年中でもよいのにな?
などとお話をしていると
なんと!
ひゅうーっと風が吹いて
それはとーっても
寒くていけない。
ひええーとか
たすけてーとか騒ぎながら兄じゃのもとへとおおあわて。
今年はやっと色が染まり始めた頃ではないか!
おどろいてしまう。
なんだかどうも
寒くなるのが早い気がするな。
これはおそらく、わらわが
もっともっと兄じゃと遊んでいたくて
暗くなっても袖を引っ張っているのとは
あまり関係がなく
暗くて怖い冬が近づくときは
いつも駆け足でせわしない感じがするためであろうな。
年の瀬も間近に見えてきて
お年賀状や暦の支度、
クリスマスまでいい子にしている心の準備もそろそろとりかかる頃。
急に寒くなるのはすぐわかるから
せめてお山を眺めるときは
人は、抱っこをしてもらったり
手をつないだり
よくしているような──毎年のそんな記憶もあることじゃ。
古いお話でもなんでも紅葉狩り
そんなに一人で行くものではないようだからな。
山にはどんな怪しいものがいるかもわからぬ。
手をつないで、おうたを歌って
もうすぐ帰る時間だと話しながら
何かに裾を引かれるように
帰りかねて──
うむ!
なるべく暖かくして
風邪には気をつけるようにしないといけないのじゃ。
好きな人にはうつしてしまいやすいような──
他の誰より一番の距離でくっついているからな。