海晴

『大風』
時は春。
まるで少し早い夏みたいに気温が上がる予報をしたはずなのに
ぼんやり湿度が高い霧がかかったように
白く薄い雲は広がり、日差しを隠して
意外と気温が上がらなかったなあっていうのも
よくあること!
見習いお天気お姉さんは
勉強のしなおしと気を引き締めるとしても
いちいち落ちこんでいたってどうにもならないのが
春の陽気なので
しかたない!
そういうこともある!
いや、これは逆に考えたら
大好きなかわいい弟に
少し弱っているところを正直に見せて
優しい言葉をもらえるかもしれない
チャンスなのではないだろうか?
やっぱり何事も前向きが一番よね。
がっかりすることなんて数えだしたら
きりがないんだから。
んんっ!?
霧が出た日に……
きりがない?
まあいいか。
ともかく落ち着かなくて変わりやすいお天気。
このあいだの雷も大雨も広がる薄い雲も
春なのにというか
まさに春ならではというか
意外と縁側でのどかにぽかぽかしてばかりはいられないの!
だったら楽しまなきゃもったいない!
という感じで
春らしいいたずらな風が吹いて
スカートの裾を揺らしても
困って立ち止まるばかりだけではなく
きっと私が──
地球さえも気になってしまう
美人だからなのね。
というごっこをしてみるの。
重要なポイントは
素に戻ってしまって
そんなことあるわけないか……
なんて当たり前のことを考え始めたら
やや空しさ倍増となるため
ここは意地でも
なにがなんであれ浸りきる。
これ!
だいじ!
冷静になってしまっては
考え方に広がりはなく
まだ誰もたどりついたことがない未知の意見なんて
なかなか思い浮かばないものだからね!
でも、常に落ち着いて物事を考えるのはいいことだっていう意見も
まああるとして。
それだけでは探し出せない
ときめきが欲しいときもあるはず。
だって突風が吹いたら
隠れて動かないのがベストの対処法だなんて
わかっていても
せっかくこんなにきれいで暖かな
新しい季節が訪れたのに!
もぞもぞしちゃうでしょ?
誰でもそう。
内気で新しいことが苦手な
怖がりの子でも
知らない道に一歩踏み出すのもためらう
大人の分別を身につけた海晴でも
でも今だけは勇気を出して
ぐっと顔を上げて前を向いたら
今までになかった景色が広がっている──と、いいな。
ともかく気温の変化が激しくて
知らず知らず体調を崩しやすい季節。
そこをわかっていて
不健康な姿を見せてしまったら
慰めてもらえるどころか
やさしい弟くんは
その時、きびしく私を叱ることになってしまうかもしれない!
愛する人につらいことを言ってしまうなんて
そんなことはさせたくないから
一日の終わりに好きな人の顔を見て元気を取り戻し
がんばった自分を少し褒めてあげたら
ゆっくり休むのも社会人のお仕事のうち。
キミも新学期を迎えて変化の激しい一週間、おつかれさまでした。
明日の休日は、ちょっと朝寝坊をしてもゆるしてあげる。
ころあいを見て
やさしい美人のお姉さん──のつもりで
ばっちり起こしてあげるから
まったく何も心配しないでゆっくり休んでね。
私の家族がいい夢を見ながら眠れるように
かっこいいなんでもできる大人のふりをして
頼れるところを見せたい週末の夜です。