ヒカル

『いつもの春風』
春風の熱なら大丈夫。
寝ていればすぐよくなると思う。
まあ──
熱があっても、そうでなくても
言うことはあんまり変わらないかもしれない。
っていうのは、春風の場合は
ちっとも悪い意味じゃなくて
素直な気持ちを──好きな人がいるって伝えるのを
やめないということ──
簡単じゃないと思う。
勇気がいると思う。
まあ、熱が出ると
普段より少し──迷いもためらいも消えて
愛情を受け取るのは体力が必要になりそうだ、
という感じになって
まわりが戸惑うけれど
それも少しだけ──
春風にしてみれば、誰にどう思われたって
自分の気持ちと比べたら
そんなに関係ないんだろう。
それにしても──
私たちの姉としての姿じゃなく
あまり見たことがないときの──
本当の気持ちを伝えようとすると
あんなにまっすぐで
全力で
ブレーキを知らない春風になるんだな!
いつも春風に一番に愛されている誰かは
あんな姿を
よく知っていたりするのかな。
オマエはどう思う?
あっ、これではなんだか
春風の一番好きな人が
オマエだと言ってるみたいだ──
まあ、そうなんだけど。
春風がいつも大好きで
好きを伝えるのに本気になって
そしてたぶん、私たちの知らない春風を知っているのが
他の誰でもない、私たち家族のただ一人の男の子だなんて
びっくりするような──少し安心するような──
そういうことで
なんだかんだ、季節の変わり目で
体調を崩したり
熱が出る子もまた出てくるかもしれない。
また誰かと一緒にいたいとか
気持ちを隠すのが下手になったり──
そんな子もあらわれるかもしれない。
でも、私なら
体の丈夫さが取り柄だから何も問題はない。
こういう時期、何かあったら
必ず頼れる家族がいるというのも
心強いだろう?
私は、お前にとってそうでありたいんだ。
これは別に──熱があって気持ちを伝えたくなったとかではないと思う。
いつもこんなふうに──オマエに言ってると思う。
そうだと私は考えているんだが
どうだろう?
なんだかどきどきしてきた──やっぱり熱があるのかな?