ヒカル

『復活』
春風もようやく
頭からかぶった塩の匂いが消えて
みんなの前に出てこられるようになった。
まあ、塩の匂いなんてそんなに気にならないけど
恥ずかしがりの春風だから
そう言って隠れたがっただけだろう。
うちは家族が多くて、
しかも年末で慌ただしい感じになって来ると
いつも家の中が片付き
すっきりした状態とは
とても言えないので──
よくわからないものが降ってきて
頭に当たることも、
足元に転がっている
なんだかわからないものにつまづきそうになることも
そんなに珍しくはない。
とはいえ、ケガをしたら大変だってのは
間違いないんだよな──
寒さも厳しくなってきて、
キッチンの出番が増えてくる時期であり
同時に人が集まるところでは
危険も多くなりやすい──
春風にはしばらくの間、
危ない目に合わないようにするため、
高く手を伸ばすようなときや
力仕事が必要な時など、
誰かの助けを呼んで
協力するようにしないといけないと、
海晴姉からの言いつけがあった。
人が多くて
大変なことになるのが大家族の悩みなら、
助けてくれる人が
必ず見つかるのも大家族の強み──
そういうふうになればいいと思う。
つまり、そこそこ背が高いほうで
腕力での手伝いも期待できる
私やオマエのもとに──
味見や買い出し以外にも
仕事が増える形になる。
キッチンで明るい鼻歌が聞こえて、
元気よく呼ぶ声があったら──
少しだけつまみ食いのチャンスを期待する気持ちを抑え
迅速に駆けていくんだ。
助けを呼ばれたら
すぐに現れる──
そんなことができるとしたら、
サンタクロースほどじゃないけれど
ちょっといい感じの仕事だろう?
オマエも散らかった家では
足元と頭上に気を付けて!
なんだかよくわからないものは──
なにしろ、よくわからないからな!