観月

『その名は復活ペナルティアップ』
だんだんと明るい時間が長くなってきて
春の訪れを肌で感じるこの頃、
たまに雨のしとしと降り続く冷たい日が来ると──
寒い季節に取り残され
闇に潜んで身をよじり──忘れられていく
あのいびつな存在の名は
なんというのであろう。
徐々に減りつつある、あやつが住み着いた陰の名を
どれだけの人が知るであろう──
誰もが見ないようにして、
そのうちいつかは消えていく。
それなのに──ときどき
言葉の端にのぼる
あれは人の理解を越えたもの。
この混沌きわまる浮世は
説明もままならぬ夜の闇を運命的に孕んでおる──
あるいは、そちらのほうがずっとずっと
世にあふれて──本当はそちらが常世の主と言えるのかもしれぬ。
ほら、今日も取り残されたものたちが見えるぞ。
楽しくわいわいはしゃいだ子らに混じって
ほんの少しおどろおどろしさをのぞかせた
あやつは──
そう──
人の心に潜み続けるあやつは、
ちゃめっ気や遊び心に似ているのにどこかねじれた
ちょっとこわいもの──
インクを塗り合うゲームにあらわれた仇花、
自身と相手に等しく恐れを与える魔物、
復活時間を伸ばす効果のあるギア──
そう、復活ペナルティアップじゃ。
長く遊んでいると
たまには変わり種に手を出したくなる気持ちも
わかるというもの──
そして、その本当の恐ろしさは
近づこうと──見つめようとした者にしか
きっと理解することはできぬのじゃ──
ほれ、見よ。
せっかくサブ性能アップを積んで射程を伸ばしに伸ばしたというのに
びくびくして前に出られぬものだから
戦績は一度もキルを取れないことも珍しくはない──
活躍した気がしてくるのは
トーピードの反応に駆けつけてくれる仲間がいてくれたときだけじゃ!
おまけに、どんな試合でも相手に近づく場面は必ずあるから
決して負けられない緊張感──
人はそのような状況で長くいられるようにはなかなかできてはおらぬ。
結局、少し使ってみたら
そのあとはスイーツフェスにちなんで用意しておいた甘いもので休憩じゃ。
疲れた時にこそおいしい──染み渡るその味が、無謀な挑戦の報酬と言えるかもしれぬな。
しかもそれからゲームを続けたら
得意なルールとステージが来たと意気込んで参加したときに
自分でもわかるくらい動きが悪くて勝率が振るわなかったそうな。
やはりおどろおどろしい呪いには、それなりの代償があるのじゃ──
しかし、ただ単にシーズン終了間際で
こちらに自由な動きをさせてくれないほどの腕前の人が
最後に成績を伸ばすつもりで参加しはじめた可能性もある──
よいよい。
人の心の闇も、純粋な向上心も、ちょっとした遊び心も
すべては混沌の中──名も知れぬ感情の渦に翻弄される小さな一部。
全てを抱えて
みなの成績が上がり──良い動きもたくさん増えていく
おもしろい試合がたくさんあるとよいの。
それを作り出すのは、闇も欲望も何もかもがある、この常世じゃ──やあ、楽しい冬の日じゃ。