観月

『ダークストーカーズ』
夜の闇に、
廃屋の奥に、
カーテンの隙間のかすかな窓の景色に──
いつからいたのか?
それは、ずっと昔から
振り向けば見つけられる距離で──
息づかいが聞こえるほど近くで
人の友として過ごし──
逃れることができない日常の一部として
すっかり入り込んだという。
人の暮らしがどれだけ便利になっても、
どのような理屈をもってしても
説明のつかないもの──
やがて見渡すすべてが科学のまぶしい光で照らされる
遠い未来であろうともおそらくは──
影は濃く、
人の心は
ありもしないとされるものを見る──
恐れることはない。
ずっと昔から人の隣にいるもので、
これから先も離れていくことは決してない──かわいいやつらじゃ。
でも、さみしいことに
その姿は時々形を変えて、
見慣れた顔を見かけることも少なくなって、
幼い頃によく手を取って遊んだものたちも
どこに行ったのか──
本当かどうか定かでもないおぼろげな思い出と
少しの誇張を交えて人に語る言葉と、
そして──語られる昔からの言葉を聞くしかない。
かれらは
ほんとうにそこにいたのか?
誰も確かめようがない
もはや、人の心の
奥底の見えないようなすみっこにしか
それは確認できないというのだ──
それでも?
もしかしたら、本当に?
いつか──忘れたころに気まぐれに
ふたたび、みたび
姿を現しては
色濃い影と信じられないうわさ話と
まがいものも混じった新しい目撃談をついでに残すために
またやってくる。
昔から──そういうことはよくあったというから
またこれからも
きっとあるのだろう。
なんだかこのごろ、闇の向こうから聞こえる声が騒がしいの。
それとはまた別のような話題らしい声も
影の中か、使っていない部屋かどこかから聞こえてきて、
ぷれすて……? を、さがすのがたいへんでも
すちーむ……? で、でるのは
とてもたすかるとか
どちらにも、びくとる……? が、でてくるから
やはり定番を抑えるおはなしはまちがいないとか
なにやらよくわからぬが
どうも、見たことのないやつがやってきて
新しいおはなしでもはじまるのであろう──
それは、人の営みの
どこにでもあったこと、
いとしくおもしろい──むかしにもあったこと。
また──知らないものを、見ることができるかもしれぬの。
人の生きていく日々は──予想もつかぬことばかりがいっぱいで楽しいな。