観月

『暗い夜を』
さむいさむい。
昼はもうずいぶん
汗ばむくらいなのに
夜の冷え込みはまだまだ厳しいの。
あったかく身を守るよう
心掛けねば──
風邪でもひいたら
たいへんじゃ!
立夏姉じゃなどは
ぷるぷる震えて
ずっと昼ならいいのにな!
そう願うようじゃな。
お出かけの時間をとりたいと──
今の世の中では自由にいかぬが
近くを歩くだけでも良いものだそうで
海晴姉じゃなども健康のためにお付き合いと立ち上がる。
ころころ楽しそうに
おもしろがって
みんなでついていく。
うむ、昼が長く続くというのも
なかなかいいことが多い。
でも、寂しく暗く
寒くて凍える夜に
どこか湿った洞穴や草叢に隠れて潜まねば
とてもいられぬような小さく弱きものが
常世にはたくさんおる。
わらわも家族のみんなも
日が暮れねば
帰る時刻も見つけられぬ──
休むこともできぬ。
ふと目を開けて
窓の向こうの夜空に
小さく灯るあかりを見つけることもできぬ──
並んだ星の光に
眠れぬ夜の空想を広げることも──
立夏姉じゃや海晴姉じゃだって
汗をかいて帰ってきて
暗いお風呂にかわいい電気をつけ
みんなで入るのが大好き。
わらわだって、もちろん──
ううん、しかし昼の明るいお風呂もたまにはいいものかの。
心は迷うのじゃ──
それにしても
今夜もまた本当に寒さはきびしい。
みなが穏やかに過ごす静かな闇の中──
母に抱かれるような安らぎのうちに
家族みんなが過ごしているようにと思う。
願いをかける星なら今夜もきらきらまぶしいぞ。