『また明日』
今年もなかなか
にぎやかなバレンタインだった。
家族がみんな
チョコレートを食べ通しで
ふだんから元気な声がする家の中が
ますます活気に満ちていたな。
それにしても
こんなに甘いものばかり食べると
そろそろ甘いものが食べたくなるな──
ああ、そうだ。
聞き違いというわけではない。
オマエにもあるだろう──
ごはんのおともの
しょっぱいものにも種類がある。
うるさい妹も
なんだかんだで一人一人違う。
甘くとろけるチョコレートも苦い大人の味も
たくさん食べたのはいいが
体力も使ったことだし
準備にも時間がかかった。
甘いものにもいろいろあるから
たぶん、何を食べるかで
出てくる元気の種類も違うんじゃないかな──
ほら、見るといい──
今日からしばらくは砂糖のないコーヒーでいいだろうと言っていた
海晴姉でさえ──
ちょっとまわりを気にしながら
味付けを整えている。
あれは本当に
ミルクやクリームだけで満足できる顔だろうか?
みんながんばった日なのだ──
好きなものを選ぶくらい
誰がとがめることなどあろうか。
ただちょっとまわりを気にする海晴姉が面白いだけだ。
オマエはどうだろう。
それは──
もう甘いものはしばらくいいという顔だろうか──?
家族みんなに愛され
少しお返しにも期待され
大変な日を乗り越えて
明日からまた大騒ぎの日常に戻っていこうとする
男の子の顔には──
まだちょっと名残惜しさと
味変を求める遊び心が
存在してはいないだろうか?
この宇宙には私たちの知らない未確認の事象がまだたくさんある。
家族でただ一人の
みんなが大好きな長男にだって
全て理屈で解明できるとは限らない
甘い甘い感情が──
もう少しみんなと一緒にいたい気持ちがあったって
何も不思議ではないからな。
広大な宇宙だからしょうがない。
言い訳など、ただそれだけでかまわない──
そういえば、あんこを隠し味に使ったチョコレートの試作品もあったようだな。
この家はまだ世界中のチョコレートを集めきってはいない。
たくさんの味を楽しみながら──これからもまだ試行錯誤ができるようだ。
そして、世界中の愛情をすべて集めて比べても
きっとそれ以上と胸を張って言えるほどの
気持ちであふれているとしたって──
私たちにはお前に渡したい気持ちも
伝えたいこともまだまだたくさんある。
うーん──またこれからもみんな大変そうだな。
まあ、そういう家が宇宙のどこかにひとつくらいあっても、きっとかまわないのだろう。
宇宙のことだから仕方ないな──
私がどれだけお前を愛し続け、これからも変わらぬ気持ちを今ここで誓ったとしても
そういうこともある、でいいんだ──気にせず気持ちを受け取るといいぞ。
ただ受け取ってもらいたいだけなのだ。