夕凪

『雪が降る』
もうすぐ夕凪たちの街に
雪が降りそうだ!
大人たちは雪かきの準備をしている。
子供は寒くないように着替えを探している──
夕凪はね、
雪は降ってほしいけど
転ぶのはイヤだ!
足場が悪くなるのはイヤだ!
というか寒いのが大変だ!
それはまあ季節が冬だから
雪なら一度くらいは見ておかないと
物足りない気持ちもある──
はらはらと舞い落ちる白、
積もっていく白、
そこに泥だらけの靴下と
遊びやすい短パンで走り出す子供たち──
冬が寒いのは
雪遊びができるって理由がなければ
納得できない!
そうであってほしい──
あの真っ白な
神秘的な景色があったら
まあ冬が来るくらい
たまにはいいか!
と思ってしまう──
実際には、そんなに積もらなかったり
すぐに泥になってしまうとしても
やっぱり降ると降らないとじゃ
気分が違うよ!
そう思わない?
でも、せっかくなら
一度くらいは降ってほしいと思う夕凪の
マホウの仕掛けくらいでは
天気はすぐには変わらないでしょう?
だから、夕凪のできるマホウといったら
もう降るものだということにして
みんなが風邪をひかないように
さむがっている子のところに行って
抱き着いて暖めてあげたり──
あたためるという言い訳で遊び相手になってもらったり
むしろ暑いと言われても離れなかったり──
お兄ちゃんにも近づいて隙を探してみたり
いろいろだ。
雪が降る予報、
とても寒くなる予報──
そんな時に何かを狙い
はりきったあまりに体の内側からぽっかぽかにあたたまりながら
転ばないように足場を気にしている
動きやすい短パンかミニスカートの子がいる。
その子がいる場所も
狙いをつけている相手も
夕凪は知っている──
なにしろ自分のことだから!
やっぱり雪が降ると大変だけど
降ってほしいな──
そんな意見もあっていいと思うんだ!