氷柱

『なんでもない日』
今日は節分の前の日。
これといって特に何もない普通の日よ。
変わったことと言えば
急に寒くなってみんなの体調が心配なくらい。
まあ、これは
家の中であたたかくしていれば
何も問題はないわね。
他に特別なことと言えば
明日の節分に備えて
みんなの健康を祈る縁起物や
ちょっとした節目の日にふさわしい買い物を
いくつか済ませておきたいというくらい──
家族が多いと、準備しておきたいことも
やっぱり増えるから
前日にできることを済ませておくのは
すこぶるかしこく
堅実な態度と言えるわね。
誰にでもできることではない──
そんなふうにほめてもいいかもしれない。
でも、ちょっと待って──
明日の準備を進めておきたい。
寒い日は外に出ないで家の中にいるほうが正しい──
どちらもうなずける二つの意見が食い違った時、
選ぶべきなのは──
こんな時、人は迷わないように
自分の信念というものを
普段から持っているべきなの。
私の場合は
日頃から信頼している
下僕がいるということ──
それが何よりの支え。
何よ、熱なんてないわよ。
下心はあるけど。
どういうことかというと
買い出し班は荷物も多くなるし、たぶん力仕事だし
苦労してみんなに感謝してもらえる役目を
あなたに譲ってあげようというわけ──
買い出しのメモは文字が汚くて読めないといけないから
ちゃんと確かめておいてね。
この、甘いお菓子のぶんは
労働したあとにエネルギーを必要としている誰かのため
一緒に食べてあげようとしているご主人様がいると
そう言っているようね──
メモひとつでわかることもあるのね。
決して私が食いしん坊だと読み取ってはいけないからね。
じゃあ──大変な仕事だけどよろしく。
明日の鬼の役を押し付けられなくなったら──いや、大事な役目ができなくなったら困るから
何かあったらすぐに私のところに助けを求めていいからね。