観月

春の嵐
わらわじゃ!
観月じゃ!
わらわは知っておるぞ──
人の情念は
風を呼び嵐を呼び
雷までも呼び寄せて、
世界の形を変えてゆく──
人は、世の中を知ったように
人の力などちっぽけだと言うが
わらわはそうは思わぬ。
どんな理も作り変え
何物にも従わず
その強大な力を発揮する。
ただ、その身に思いを宿すがゆえに──
ただそればかりの理由で──
人にとっては、それで充分なのかもしれぬ。
春風姉じゃはこのごろ
あたたかくて陽気な気分で
うかれているようで、
兄じゃやみんなとどこかへおでかけもいいし
おうちで過ごすのも楽しいと言っておった。
こんな日々のために生きているのだとも──
ううむ、この思いを知っておる。
人はこうした
大事なもののためにこそ生きて、
そしてすさまじい力を発揮するのじゃ。
春になると強い風が吹く
あれはたぶん──
あたたかくておでかけしたくなったり浮かれた気分の
春風姉じゃが巻き起こしておるに違いない!
みたいなことをおばあに話してみたら
それは別に関係なく
春のすさまじい風の力はまた別だとか。
人の力はすさまじいが
やっぱり、みなを包み込む自然の力もなかなかのものじゃな!
でも、わらわはやっぱり
ちょっぴり疑っておる──
春風姉じゃを気にして眺めているのじゃ。
たぶんおなかがすいているとか
甘いお菓子のにおいがしているとか
そういうことに理由を付けているわけではないと思う──
たぶん違う──
そうこうしていたら、春風姉じゃにお菓子作りに誘われたので
わらわも少しお手伝いをしてみるのじゃ。
寒い冬を元気いっぱいに──おいしいものも食べて過ごせるとよいな。