観月

『迫り来るもの』
ややっ!
気配を感じる──
海風のほうからか
人の住むあたりか
それとも星のまたたく夜から来るのか
きょろきょろしてみたが──
やはりどうも
いつもの大変な力持ちが
押し寄せて来たに違いない。
あやつはものすごいものを運んできて
誰もかなわぬ──
修行をしたとて容易には止められぬ。
来たぞ!
この風は──
そう、あやつの名は冬将軍じゃ。
これからしばらくわらわのまわりは
冷たく白く
静かに音が消え──
また寒くなっていくのだろう。
ころころ変わる気まぐれなお天気が
やがて来る春を──
一日も早く運んでくれるとよいが。
それにしても、みんなを怖れさせる冬将軍に
すごい力があるのはわかっておるのだが──
いつもの冬の知らせなのに
おいしいオーラをたくさん飲み込んで育つキュウビであっても
こんなにも大きくふくよかになるものであろうか?
ちょっと冬の寒さでは説明できない
膨らみ方をしているような気がする──
まるでうれしい栄養満点のごはんを
毎日もりもり好きなだけ食べているような姿になってきた。
そういえば最近のおやつは
姉じゃたちの気合と情熱を感じる手の込んだものばかり。
きっとわらわもバレンタインデーには
おいしいチョコレートを贈るのじゃ!
しかしわらわがうれしいからといって
一人きりの力でこんなにもキュウビが膨らむものかの?
とりあえず、おいしいおやつは早い者勝ち。
まずはたくさん栄養をつけてから考えるのじゃ。
わらわが育つとしたら原因はすぐわかってしまう時期じゃな。
……兄じゃも本当によく育つと思うか?
昨日よりも重たくなったと兄じゃを喜ばせたいのじゃ。